著者
伊藤 秀一 小川 杏美 平田 彩夏 岡本 智伸
出版者
東海大学農学部
巻号頁・発行日
vol.31, pp.21-29, 2012 (Released:2013-10-08)

動物園の飼育環境は,野生環境と比較すると刺激が乏しいことから,動物が異常行動を発現するなどの問題が指摘されている。近年の動物園では野生環境の再現を行う生態的展示と呼ばれる管理法の導入が試みられている。しかしこの管理法では,動物が陰に入ってしまい,動物を目にする機会が極端に減少してしまう可能性があることから,動物園への来園者が"動物体を見る"ことに重点をおいている場合は,動物園の利用が減少する可能性が考えられる。そこで本研究では,動物園来園者が動物園に求めていることを知るために,動物飼育と遊園地等の複合施設においてアンケート調査を行った。調査項目は(1)来園者の属性に関する項目(2)動物園の利用頻度についての項目(3)来園の目的に関する項目(4)来園者が動物園に求めている内容に関する項目とした。5日間の来園者数は9548人で,アンケートの回収数は972人だった。解析の結果,動物の飼育環境を野生に近づけて動物体が見にくくなる環境に関して,見える方が良いという回答と見えにくくても良いという回答はほぼ同数だった。また,動物への好みに関しては,"珍しいが寝ている動物"よりも,"どの動物園にもいるが活発に動く動物"を見たいという回答が多かった。
著者
河本 佳奈江 井越 敬司 門岡 幸男 小林 弘昌 安田 伸
出版者
東海大学農学部
雑誌
東海大学紀要. 農学部 (ISSN:18831516)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.31-38, 2012

体内における酸化バランスの破綻は動脈硬化症やガンなどの生活習慣病の発症リスクを高めることが知られており,特定の食品摂取によるこれら疾病予防効果が期待されている。乳発酵食品であるチーズの健康維持および増進に有益な情報を提供するべく,本研究ではヤギ乳チーズが2種類の活性酸素消去作用を介した抗酸化作用を有するか調べることとした。まず15種類の市販のヤギ乳チーズから70%エタノール可溶性画分を調製し,遊離脂肪酸,トリグリセリド,総フェノールならびにペプチド含量の測定を行った。次に,2種類の活性酸素である過酸化水素(H2O2)およびスーパーオキシドアニオン(O2-)ラジカルに対するヤギ乳チーズ抽出物の消去作用を分光学的に調べた。15種類の各チーズ抽出物のなかでKavliチーズが最も高いH2O2消去作用を示し,Saint-Maure Soignonチーズが最も高いO2-ラジカル消去活性を示した。このとき,チーズのH2O2消去作用と遊離脂肪酸含量,トリグリセリド含量またはフェノール含量との間には有意な正の相関性が認められ,O2-ラジカル消去作用と遊離脂肪酸含量またはペプチド含量との間にもまた正の相関性が認められた。以上より、ヤギ乳チーズはこれらの代表的な2つの活性酸素種に対して抗酸化能を有しており,その強さは含有する遊離脂肪酸,トリグリセリド,総フェノールまたはペプチド量によって部分的にではあるものの関連づけられうることが示唆された。