著者
時得 紀子 小林 田鶴子 内海 昭彦
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.265-274, 2011

今次改定の小学校学習指導要領解説音楽編では、共通事項(1)のアで、音楽的な感受の能力の内容を具体的に示し、音楽の要素や仕組みについて気づき、感じ取ること、具体物の操作や言葉のやり取りを通して新たな考えをもつようにすることが求められている。このような音楽を通じて思考・判断する活動では、楽曲を聴き、その要素や仕組みについて聴きとらせ、根拠をもって価値判断をさせることや、要素や仕組みへの具体的な根拠をもった「気づき」等を通して、「思いや意図」をもった表現の活動へのつながりをもたせることが重要である。そのためには、音や音楽に含まれる要素や仕組みの特徴を楽譜や映像を通して「可視化」したり、他の要素と区別して聴き取らせたり、仕組みについて具体的に理解したりさせるような、教師の側の工夫が有効な手段となる。また、言語や具体物などの可視化した情報を使って学習者が意見交換し、新たな価値を見出したりすることの効果も大きいと考える。筆者らは、このような「活用型」の音楽学習では、音楽の要素や仕組みについて具体的に且つ視覚的に捉えることが容易となるICTによる授業支援の方策が有効ではないかと捉え、実践を試みた。その結果ICTによる支援が音楽の知覚・感受に効果的な役割を果たし、思考力・判断力・表現力を培う成果が見られることが明らかになった。