著者
小林 達夫
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

Quark, Leptonの質量や混合角の起源を探ることは、素粒子論の中で重要な課題の1つです。また、超対称模型の枠組みでは、現実的な湯川行列を生み出す機構は、超対称性の破れの項への影響を考えながら議論すべきです。更に、超対称性の破れの項については、フレーバー間の縮退度に関して大きな実験的制限があります。上述のようなことを踏まえ、縮退したsfermionの質量を導きつつ湯川結合の階層構造を与えるような模型を研究しました。まず、超対称標準模型に加えて超共形固定点をもつようなSCセクターのある模型を研究しました。この超共形ダイナミックスがquark, leptonに大きなanomalous dimensionを生成するので、この模型では湯川結合の階層構造を出しつつ、縮退したsfermion質量を導くことが可能です。また、似たような結果を導く別の模型としては、余剰次元がwarp背景幾何上の模型を研究しました。この模型では、湯川結合の階層構造の生成に役立つのは、5次元bulk massによる、bulk場の局在化です。更に、ラディオンにより超対称性の破れが起る場合には、フレーバー問題も改善されることが分かりました。また世代間にS_3離散対称性を課すような模型を調べました。このような対称性はこれまで提案されてきましたが、我々の模型の新しい点はHiggsセクターにもこの対称性を課せるようにHiggsセクターを拡張した点で、そのため、超対称性の破れの項もこのような対称性をもつと仮定でき、FCNCへの効果を実験の制限程度に下げることに役立ちます。更に、弦理論の枠内で湯川結合の計算をしました。特に、興味があるのはorbifold模型で、なぜなら階層的な湯川結合が導けることが知られているからです。これまで代表的なmoduliへの依存性は分かっていましたが、今回我々は様々なmoduliへの依存性を計算しました。我々の結果の中で、現象論的に重要なことの1つは、湯川結合での物理的なCPの破れに関しては、ある特定のmoduliしか関与しないことを示した点です。