- 著者
 
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             小森 正彦
             
          
 
          
          
          - 出版者
 
          - 研究・イノベーション学会
 
          
          
          - 雑誌
 
          - 研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
 
          
          
          - 巻号頁・発行日
 
          - vol.19, no.3_4, pp.203-213, 2004-12-24 (Released:2017-12-29)
 
          
          
          - 参考文献数
 
          - 23
 
          
          
        
        
        
        大学・院卒業者と専門的・技術的職業従事者のデータを用い,わが国の知識労働者の分布状況を調べると,市区町村レベルの集中度合では,武蔵野・文京・国分寺・麻生(川崎)・小金井・青葉(横浜)・鎌倉・国立・渋谷・杉並・多摩(川崎)が上位を占める。集積のウェイトも考慮すると,世田谷・練馬・大田や,岡山・奈良・熊本などの地方中核都市が上位に加わる。わが国の知識労働者は,主に近郊の都市・交通利便性の高く生活環境のよい都市に自然集積している。そこでは全般的に所得が高い。多様性への寛容度も相応に認められる。知識労働者の生活の場は郊外化しているが,知識創造には対面の対話が重要なため,職場は都心部の本社などが中心である。知識労働者は毎日長時間と多大な労力を通勤に費やしている。知識労働者の集まる近郊都市において,仕事と生活・文化を融合し,生活の場の創造力を誘発すれば,身近なイノベーションが可能となる。大都市中心部に住機能を整備して再利用し,文化的刺激のなか職住近接の環境を整えれば,知識労働者が時間を有効活用できる。地方中核都市は,多様な人材を活用することにより,人材難を緩和できる。知識労働者は,充実した仕事と快適な生活を求める人々である。多様な都市が,高質の生活環境を用意し,多様な知識労働者を惹きつければ,その相互作用により,自都市の,ひいては国全体の競争力を維持することができるだろう。