著者
小椋 宗一郎
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.207-215, 2007-09-20

ドイツでは、医学的に適応がある場合等を除き、中絶手術の少なくとも3日以前に「妊娠葛藤相談」を受けることが法的に義務付けられている。この相談に関しては少なくとも二つの問題が指摘されている。第一に、自発的対話を旨とする相談が法的に義務付けられているという問題がある(「強制としての相談」)。第二に、同相談は「〔胎児の〕生命保護」を目的とすると同時に、「〔相談後に女性たちが出産か中絶かの決断をすることについて〕結果を問わない」ものでなければならないとされる点について議論がある。本論文は、相談の現場に即してこれらの問題について考察する。ドイツのカウンセラーたちによると、実際、これらの問題は実務上の困難をもたらしている。しかしその困難は、カウンセラーと来談者による「率直さ」へ向けた努力によって乗り越えられうる。われわれはこの相談を、生命保護と同時に妊娠した女性たちの援助へ向けたドイツの人々による長期的な努力として理解することができる。
著者
小椋 宗一郎
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.207-215, 2007-09-20 (Released:2017-04-27)
参考文献数
11

ドイツでは、医学的に適応がある場合等を除き、中絶手術の少なくとも3日以前に「妊娠葛藤相談」を受けることが法的に義務付けられている。この相談に関しては少なくとも二つの問題が指摘されている。第一に、自発的対話を旨とする相談が法的に義務付けられているという問題がある(「強制としての相談」)。第二に、同相談は「〔胎児の〕生命保護」を目的とすると同時に、「〔相談後に女性たちが出産か中絶かの決断をすることについて〕結果を問わない」ものでなければならないとされる点について議論がある。本論文は、相談の現場に即してこれらの問題について考察する。ドイツのカウンセラーたちによると、実際、これらの問題は実務上の困難をもたらしている。しかしその困難は、カウンセラーと来談者による「率直さ」へ向けた努力によって乗り越えられうる。われわれはこの相談を、生命保護と同時に妊娠した女性たちの援助へ向けたドイツの人々による長期的な努力として理解することができる。