著者
小橋川 彗慧
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.9-14, 1966-03-31

本研究の目的は(1)同性のモデルが異性玩具で遊んでいるのを被験児が観察した結果として,被験児の異性玩具に対する反応に脱制止の効果がみられるか否か,(2)異一性モデルが適切玩具(被験児にとっては非適切玩具)で遊んでいるのを被験児が観察した場合にも,脱制止の効果が見られるか否か,の2点を検討することであった。幼稚園男児45名,女児45名(年令範囲5才10か月から6才8か月)が,同性モデル,異性モデル,統制の3群に配置された。同性,異性モデル群は,モデルの行動を短時間観察した後に,統制群は観察なしで,異性玩具と中性玩具の置かれている部屋で10分間の自由遊びの時間が与えられた。幼児の行動は15秒ごとに観察室から観察され記録された。測定値として,幼児が異性玩具に反応するまでの時間(潜時)と,観察中に異性玩具で遊んだ割合(異性-%)が算出された。主な結果は,(1)男児同性モデル群の<潜時>は異性モデル,統制両群の測定値より有意に短く,<異性-%>は異性モデル,統制両群のものより有意に大であった。この結果は,異性役割行動に対するモデルの税制止効果を示すものである。女児のデータでは,税制止効果の傾向が認められただけで,3条件間に有意差は見られなかった。(2)適切な性役割行動をおこなっているモデルを観察した被験児には,税制止効果も禁止の効果もともにみられなかった。幼児の異性主役割行動に対するモデルの税制止効果は,モデルの偏倚的行動と,この行動に対して実験者が無反応であったこと(罰を与えなかったこと),その2つを,観察した結果として解釈された。