著者
中村 好一 松原 優里 笹原 鉄平 古城 隆雄 阿江 竜介 青山 泰子 牧野 伸子 小池 創一 石川 鎮清
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.72-82, 2018 (Released:2018-04-03)
参考文献数
27

目的 地方紙における遺族の自己申告型死亡記事の記載事項を集計し,その地域での死亡やそれに伴う儀式の実態を明らかにするとともに,死亡記事のデータベースとしての利点と問題点を明らかにする。方法 栃木の地方紙である下野新聞の自己申告型死亡記事「おくやみ」欄に掲載された2011~2015年の栃木県内の死亡者全員のデータを集計解析し,一部の結果は人口動態統計と比較した。観察項目は掲載年月日,市町村,住所の表示(市町村名のみ,町名・字まで,番地まで含めた詳細な住所),氏名,性別,死亡年月日,死因,死亡時年齢,通夜・告別式などの名称,通夜などの年月日,告別式などの年月日,喪主と喪主の死亡者との続柄の情報である。結果 観察期間中の掲載死亡者数は69,793人で,同時期の人口動態統計による死亡者数の67.6%であった。人口動態統計と比較した掲載割合は男女で差がなく,小児期には掲載割合が低く,10歳代で高く,20歳台で低下し,以降は年齢とともに上昇していた。市町別の掲載割合は宇都宮市や小山市など都市化が進んだ地域では低く,県東部や北部で高い市町がみられた。最も掲載割合が高かったのは茂木町(88.0%),低かったのは野木町(38.0%)であった。死亡日から通夜や告別式などの日数から,東京などで起こっている火葬場の供給不足に起因する火葬待ち現象は起こっていないことが判明した。六曜の友引の日の告別式はほとんどなく,今後,高齢者の増加に伴う死者の増加によって火葬場の供給不足が起こった場合には,告別式と火葬を切り離して友引に火葬を行うことも解決策の1つと考えられた。死亡者の子供,死亡者の両親,死亡者の子供の配偶者が喪主の場合には,喪主は男の方が多いことが判明した。老衰,自殺,他殺の解析から,掲載された死因の妥当性は低いことが示された。結論 栃木県の地方紙である下野新聞の自己申告型死亡記事「おくやみ」欄の5年分の観察を行い,実態を明らかにした。約3分の2に死亡が掲載されており,データベースとしての使用に一定の価値があると考えられたが,記載された死因の妥当性は低いことが判明した。
著者
小池 創一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.1268-1277, 2002 (Released:2015-12-07)
参考文献数
28

目的 キューバのエイズ対策の概要,歴史,疫学,検査体制および療養所システムについて明らかにし,他のエイズ問題を抱える開発途上国に対して適応可能であるかについて考察を行うこと。方法 エイズ療養所への訪問および聞き取り調査(2001年 3 月23日より31日)ならびに文献調査調査結果 (1)疫学 キューバの国立リファレルセンターであるペドロ・コウリ研究所における1986年から2001年 1 月までの累積 HIV 感染者・AIDS 患者数は合計で3,230人,うち男性は2,500人(77.4%),女性は730人(22.6%)であった。このうち AIDS 患者は1,195人,死亡は843人であった。 (2)検査体制 HIV 検査は45ある全国研究所ネットワークにおいて一次検査を行い,ペドロ・コウリ研究所が確定診断を行う。 (3)治療体制 HIV 感染が明らかとなった場合,患者・感染者は療養所に入所するか,デイケアホスピタルに入院することとなる。療養所またはデイケアホスピタルでの評価,教育等の終了後は,地域における外来プログラムに引き継がれるというシステムが構築されている。 (4)キューバのエイズ対策の歴史 キューバにおけるエイズ対策は,1983年にキューバ公衆衛生省が全国エイズ委員会を設置した当時から本格化した。1990年 6 月までに延べ800万人に検査が実施され,大規模なエイズ検査態勢が敷かれた。1990年からはキューバ国内のすべての郡においてエイズ療養所の建設が始まり,1993年にはエイズ患者の外来治療制度が導入された。結論 キューバは,エイズの蔓延を防止できた点において成功を収めたといえるが,その成功は既存の保健医療システムに深く根ざしたものであり,かつ,極めて初期の段階に強力な介入を行うことができた点に特徴がある。一方,感染者をエイズ療養所に入所させるなどの取り扱いなど,手法の是非については国際的にも評価が分かれている。このため,キューバのエイズ対策をモデルとして,他のエイズ問題を抱える開発途上国に対してそのままの形で適応可能であるかという点については,更なる研究を待つ必要がある。キューバにおいてこれまでに確立された保健医療システムおよび国際協力の経験やノウハウは,将来キューバが南々協力の拠点となる可能性を示唆するものとして注目される。
著者
中村 好一 松原 優里 笹原 鉄平 古城 隆雄 阿江 竜介 青山 泰子 牧野 伸子 小池 創一 石川 鎮清
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.72-82, 2018

<p><b>目的</b> 地方紙における遺族の自己申告型死亡記事の記載事項を集計し,その地域での死亡やそれに伴う儀式の実態を明らかにするとともに,死亡記事のデータベースとしての利点と問題点を明らかにする。</p><p><b>方法</b> 栃木の地方紙である下野新聞の自己申告型死亡記事「おくやみ」欄に掲載された2011~2015年の栃木県内の死亡者全員のデータを集計解析し,一部の結果は人口動態統計と比較した。観察項目は掲載年月日,市町村,住所の表示(市町村名のみ,町名・字まで,番地まで含めた詳細な住所),氏名,性別,死亡年月日,死因,死亡時年齢,通夜・告別式などの名称,通夜などの年月日,告別式などの年月日,喪主と喪主の死亡者との続柄の情報である。</p><p><b>結果</b> 観察期間中の掲載死亡者数は69,793人で,同時期の人口動態統計による死亡者数の67.6%であった。人口動態統計と比較した掲載割合は男女で差がなく,小児期には掲載割合が低く,10歳代で高く,20歳台で低下し,以降は年齢とともに上昇していた。市町別の掲載割合は宇都宮市や小山市など都市化が進んだ地域では低く,県東部や北部で高い市町がみられた。最も掲載割合が高かったのは茂木町(88.0%),低かったのは野木町(38.0%)であった。死亡日から通夜や告別式などの日数から,東京などで起こっている火葬場の供給不足に起因する火葬待ち現象は起こっていないことが判明した。六曜の友引の日の告別式はほとんどなく,今後,高齢者の増加に伴う死者の増加によって火葬場の供給不足が起こった場合には,告別式と火葬を切り離して友引に火葬を行うことも解決策の1つと考えられた。死亡者の子供,死亡者の両親,死亡者の子供の配偶者が喪主の場合には,喪主は男の方が多いことが判明した。老衰,自殺,他殺の解析から,掲載された死因の妥当性は低いことが示された。</p><p><b>結論</b> 栃木県の地方紙である下野新聞の自己申告型死亡記事「おくやみ」欄の5年分の観察を行い,実態を明らかにした。約3分の2に死亡が掲載されており,データベースとしての使用に一定の価値があると考えられたが,記載された死因の妥当性は低いことが判明した。</p>