著者
小池 栄一 保崎 則雄
出版者
神奈川大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究は、近年内外を通じて必要性が強く叫ばれている日本語教育の中でも最も重要な学習者との相互作用に重きをおいた教材開発に焦点を絞った。まず、NHKの行った日本語教員に対するアンケート(1991)などをもとに、筆者らの米国での日本語教育、文化教育の経験(1980-1987)、担当した日本語教育(1982-1986)、教員養成(1988)の経験を加味し、この分野で望まれていて、手薄になっている教育内容を総合的に分析した。その結果、教材開発が望まれている分野を、文化に根差した日本語表現や文化の一面をインターアクティブなものとして、制作することに意義があると筆者らは判断した。具体的には、俳句を英語で紹介するという内容、非言語コミュニケーションのうち、日本文化特有の言い回しで日本語学習者が習得に困難を感じているものの2点に絞って教材を開発した。また、実際の教材の特徴を知るため、市販されている、あるいは研究所、大学などで開発されている日本語教材をいくつか実際に見、あるいは資料を取り寄せて調査してみた。これらの教材を日本語学習者、日本語母語者、研究者らを対象として数回にわたりフィールドテストした結果、以下のことが明らかになった。1)文化学習には映像、音声、文字の複合情報が効果的である。2)静止画の中に動画を適宜挿入することで学習効果を高めることが出来る。3)学習者と教材との相互作用の高い教材を若年学習者は好む傾向がある。今後の日本語教育の指針の一つとして、言語習得は人間教師が中心となって補助教材を効果的に組み合わせていくこと、そして習慣、文化の学習は映像、音声、文字にて効果的に学習し、その後実社会において失敗を恐れず、繰り返しながら強化していくという図式が考えられる。