著者
小沢 日美子
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.83-93, 2018 (Released:2018-07-11)
参考文献数
42

ヒトの発達過程における行動形成とそのための環境的要因は, 発達段階に応じて理解されることが望ましい。他者理解研究の一つでもある「theory of mind (ToM) : 心の理論」研究は, Premack & Woodruff (1978) の霊長類を対象にした研究に端を発している。そして Wimmer & Perner (1983) が, Dennet (1978) の提起を受け, 幼児に実施した「false belief task」は大変良く知られている。その後, Baron-Cohen (1995) は, 「theory of mind」 の形成の過程について, 「注意共有機構のモジュール」を論じ, 三者関係が社会環境におけるさまざまな情報の認識, また, 社会適応の基盤となるとした。そのため一者関係的認識に基づく「false belief task」の通過は, 「theory of mind」の形成とは同義とは捉えられにくい。たとえば, 成人期における「theory of mind」研究では, 対象者自身が, 「theory of mind」課題の回答の際, すでに前提としていることを把握することが欠かせないと考えられている。したがって, 今後の「theory of mind」の発達的検討でも, 自己―他者―対象との間の関係発達を捉えた社会的環境適応との関連で検討されることが重要になるだろう。
著者
小沢 日美子
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.48, pp.113-123, 2016-03-31

「心の理論」は4歳頃から成熟するが,大人でも他者の心的状態を推測する際には制限を有している。ここでは,女子大学生36人を対象に,心的帰属に関した課題を実施した。アニメーション図形を用いた課題Iでは「意図の読み取り」に着目して分析した。その結果,より複雑なアニメーション図形の方が,「意図の読み取り」が活性化されるが,「意図の読み取り」に失敗することもあることが考察された。また,ロボットについての心的帰属を尋ねた課題IIでは,語句「感情」の利用に着目して分析した。そこでは,「感情」語句利用あり群は,「心」総体について回答する視点,「感情」語句利用なし群では,「人間」,「自分」からの説明の視点,それぞれに注意が集中される傾向が考察された。