著者
桑原 芳哉
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.47, pp.15-27, 2015-03-31

本研究では,公立図書館における指定管理者制度導入実態について,網羅的な調査を行い,公立図書館における指定管理者制度の特徴について分析することを目的とする。調査の結果,2014年11月現在,193自治体,469館において指定管理者により管理運営が行われていることが確認できる。2011年度以降は,図書館の管理運営に新たに指定管理者制度を導入する自治体の増加が鈍化する傾向にある。図書館は他の公立社会教育施設と異なり,指定管理者として民間企業が指定される割合が高く,特に図書の納入や書誌データの作成等について実績を有する特定の企業に指定が集中しているという特徴がある。
著者
桑原 芳哉
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.48, pp.13-25, 2016-03-31

本研究では,前回調査に引き続き,2015年時点における公立図書館における指定管理者制度導入の現状について明らかにし,全国的な傾向を示すとともに,特徴的な事例について分析することを目的とする。調査の結果,2015年11月現在,214自治体,528館において指定管理者により管理運営が行われていることが確認できる。2015年度は,図書館の管理運営に新たに指定管理者制度を導入する自治体の増加傾向が再び強まっており,佐賀県武雄市図書館の事例が,他の自治体において指定管理者制度の導入検討に影響を与えていることが推察される。NPOを指定管理者とする図書館は少数であるが,図書館経営に住民自治の考え方を反映させた事例として注目できる一方,経営安定性等の面から2期目以降の指定を受けられない事例があり,課題と考えられる。
著者
畠山 真一
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.48, pp.101-111, 2016-03-31

本論文では,近年著しい発達を見せているVFX/CG(視覚効果・コンピュータ・グラフィックス)を利用して制作された実写映画とアニメーションを,作り手のコントロールという観点から分析する。さらに,本論文は,バルトの言う「鈍い意味」(物語に関与しない表象)についても考察する。「鈍い意味」とは,映画において意図せず撮影・投影され,かつ物語内容に貢献しないような表象である。バルトは,この表象の存在こそが,映画とその他の芸術とを差異化する要素であると主張した。本論文は,VGX/CGを利用することによって投影されるものを完全にコントロール可能な実写映画においても「鈍い意味」が残存していることと指摘する。
著者
福永 美佳
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.47, pp.A1-14, 2015-03-31

奈良・平安時代に陰陽寮で教科書として使用されていた『五行大義』を手引きとして,本論文は,『竹取物語』の求婚譚がいかに構成されているかを論ずる。先行研究は,五人の求婚者がどの五行の元素を表象しているかを明らかにしようとしていたが,意見の一致を見ていない。このような状況を改善するため,本論文は,『五行大義』こそが,求婚を失敗させる手がかりとなるものであると主張する。本論文では,この観点から,いかにかぐや姫が偽物を見破ったか,そしてなぜ求婚者が破滅したかが論じられる。
著者
宇野 文重
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.46, pp.133-151, 2014-03-31

本稿では,明治10(1880)年代の小学校教員が起こした雇用契約に基づく給与支払い請求訴訟を素材に,小学校制度と「村/むら」の関係を教育史的観点も交えつつ分析する。 行政単位としての「村」と旧来の農村共同体(集落)としての「むら」とは必ずしも一致せず,近代的学校制度の導入には困難が伴った。村の指導者層は,幕藩期以来の「むら」の旧慣に依存しつつ,「村」の就学率を上げるために形式的に「村」の小学校を設定するほかなかった。くわえて,教員の雇用契約上の地位に対する認識は曖昧で,教員と「村」との紛争を惹起した。
著者
森 みゆき
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.47, pp.149-170, 2015-03-31

明治期の日本において,一般大衆がどのように西洋音楽を受容したのか。可能な限り,その全体像を把握し実態に迫るために,地方都市の新聞における西洋音楽関連記事を網羅的に調査した。明治21年(1888年)創刊の九州日日新聞における記事,楽器や楽譜の公告,さらに楽器や演奏者のイラストが描かれた公告(薬や時計など)を調査し,時代順に一覧化した。
著者
中嶋 弘二
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.46, pp.107-118, 2014-03-31

便利で快適な現代生活が抱える健康への悪影響を指摘した。関節,骨,筋肉などの運動を担う運動器の状態を自己診断する「ロコモーションチェック」や生活状態を自己診断する「体力年齢チェック」を紹介した。ゆっくりとした動作で行う有酸素運動トレーニングを解説した。これまで筆者が取り組んできた地域教育活動の実践も報告した。
著者
河村 諒
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.48, pp.149-155, 2016-03-31

わが国では,介護職への就業増加と離職防止による介護人材の確保が急務の課題となっている。本研究では,介護職への就業希望や継続に影響を及ぼすと示唆されている特性的自己効力感と介護職を想定した職業性ストレスとの関連性及び介護職への就業希望との関連を検討することを目的として,女子短期大学生81名を対象に質問紙調査を行った。結果,介護職への就業希望に対して「仕事の適合性」は関連性が示されたが,特性的自己効力感は関連性が示されなかった。しかし,特性的自己効力感と「仕事の適合性」は相関関係が認められた。
著者
森 正人
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.48, pp.A1-11, 2016-03-31

この研究の目的は,学校法人尚絅学園の建学の精神を記述した諸資料について調査した結果にもとづき,建学の精神と教育理念の本来の姿を復元するものである。尚絅学園の建学の精神は,佐々友房と彼の同志達が起草した「濟々黌付属女學校創立ノ主旨(趣旨)」に示される。学園に伝えられてきたのは,二つの段落から成る文章である。しかし,本来この文章には,教育課程の方針について述べる第三段落がそなわっていた。このことを,新資料とそのほかの資料を用いて証明した。
著者
田口 誠一
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.47, pp.1-14, 2015-03-31

文学作品はかつて日本の英語教育でしばしば活用されていた。しかしながら,近年文学教材は際立って減少しており,それは主に日本の英語教育がコミュニケーション能力を重視するようになってきたからである。文学教材の活用とコミュニケーション能力の育成とは相容れないものとよく言われている。この論文ではオー・ヘンリーの有名な短編「二十年後」に言及しながら,英語教育における文学教材の意義を考察する。
著者
稲葉 浩一
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.47, pp.89-106, 2015-03-31

本稿は学校教育における,児童生徒の知的関心・意欲にもとづいた学習を導く「教育方法」に関し次のように論考を展開する。まず日常生活者である子どもたちにとっての「知識」の意味を確認し,そのうえで学校教育という制度的空間において求められる<児童生徒>としての知識の探求のありかた(=規範)を考察し,そこに潜在する根本的な困難を指摘する。そしてそのオルタナティブとしての児童生徒の「探求的学習」の方法を模索する。
著者
小沢 日美子
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.48, pp.113-123, 2016-03-31

「心の理論」は4歳頃から成熟するが,大人でも他者の心的状態を推測する際には制限を有している。ここでは,女子大学生36人を対象に,心的帰属に関した課題を実施した。アニメーション図形を用いた課題Iでは「意図の読み取り」に着目して分析した。その結果,より複雑なアニメーション図形の方が,「意図の読み取り」が活性化されるが,「意図の読み取り」に失敗することもあることが考察された。また,ロボットについての心的帰属を尋ねた課題IIでは,語句「感情」の利用に着目して分析した。そこでは,「感情」語句利用あり群は,「心」総体について回答する視点,「感情」語句利用なし群では,「人間」,「自分」からの説明の視点,それぞれに注意が集中される傾向が考察された。
著者
釜賀 誠一
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.47, pp.49-61, 2015

尚絅大学では大学生を対象に授業改善アンケートが毎年実施されている。アンケートの回答項目にはマークシートと自由記述の項目があり,マークシート項目についてはグラフ化などの分析が実施されている。しかし,自由記述については担当教員へ知らせる程度で活用されていなかった。そこで,自由記述について,どのような傾向があるのかテキストマイニングを用いて,学生の改善要望を分析し今後の授業改善方法を示した。
著者
武田 昌憲
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.46, pp.A15-26, 2014-03-31

島原の乱を描いた絵図についての考察。絵図の中に説明文がある。これを紹介した。この表記に,絵巻や屏風絵等と異なる独特の文学性を指摘した。絵図には人が書いてないのに,説明文で物語がわかるようになっている。これまで指摘がない内容である。
著者
片桐 真弓
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.45, pp.1-20, 2013-03-31

本稿では,母親に対する縦断的面接調査を下に,幼児期から児童期における家庭教育の実態について明らかにした。(1)幼児期から習い事を利用しており,子どもの意思を尊重しつつも,親側が意識的に習い事の選択をしていた。また,通信教育を利用する家庭が見られた。(2)宿題については,親のサポート体制の下で家庭学習が行われていた。宿題ほどの比重はないが,何らかの手伝いをさせている。ゲームの取扱いについては苦慮しており,ルールを設定していた。(3)子どもの将来像では,子どもの主体性に任せるとする母親が大半であるが,希望を叶えるために,基本的な事柄を重視している。(4)母親自身の就労の背後には,家庭教育に関する母親としての責任感が見られた。そして,家庭教育への責任を果たすために,働き方を調整しているケースも見られた。