著者
小沢 隆司
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.フトミミズ(Amynthas vittatus)と、シマミミズ(Eisenia fetida)を、灰色低地土内で飼育することによって、土壌の全窒素量、土壌のアセチレン還元活性、およびMPN法により求めた好気性窒素固定細菌数の増加が認められた。また、フトミミズを飼育した土壌では、飼育しなかった土壌に比べて低い^<15>N自然存在比(δ^<15>N値)が認められた。2.フトミミズを入れた土壌を^<15>Nで標識したN_2-O_2-Ar気相下で培養したところ、フトミミズを入れなかった対照土壌に比べ有意に高いδ^<15>N値が得られた。3.無窒素軟寒天培地を用いてフトミミズの腸管、糞、体表および土壌から好気性窒素固定菌を分離した。16S rDNAの部分塩基配列とRFLP解析、および生理的特徴から、これらの分離株は主に、Azorhizobium caulinodans, Azospirillum brasilense, A.lipoferum, Azospirillum sp., Klebsiella oxytoca, Pseudomonas sp., Rosemonas fauriae,およびXanthobacter sp.に属していた。4.フトミミズを飼育した土壌およびフトミミズの糞よりDNAを抽出し、これを鋳型にしてPCRによりnifHの部分配列を増幅し、増幅産物を変成剤濃度勾配電気泳動法(DGGE)によって解析した。DGGEゲル上のバンドパターンと各バンドから抽出したnifH断片の塩基配列を調べた結果、土壌の窒素固定細菌群がフトミミズを添加することによって多様化することを明らかにした。5.以上の結果より、フトミミズはその腸管内および体表に多様な窒素固定細菌を集積することによって、土壌中の窒素固定細菌群の増加と窒素固定の活性化をもたらし、土壌の肥沃化に貢献することが示唆された。