著者
小河原 はつ江
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.105-124, 1994

特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) など各種血小板減少症の患者を対象として血小板結合免疫グロブリン及び補体第3成分量の臨床的意義について考察した.血小板結合免疫グロブリンG (PAIgG), 血小板結合免疫グロブリンM (PAIgM), 血小板結合免疫グロブリンA (PAIgA), 血小板結合補体第3成分 (PAC3) は免疫性血小板減少症のみならず, その他の血小板減少症でも増加することもあり, ITPに特異性はなかった.しかし, PAIgG, PAIgM, PAC3が共に正常範囲の症例の比率はSLE, リンパ増殖性疾患, 肝硬変に比し, ITPで有意に低値で, PAIgGのみ上昇した症例に比し, PAIgG, PAIgM及びPAC3が同時に上昇した症例で有意に血小板数は低く, 血小板寿命は短縮した.また, PAIgG, PAIgM, PAC3は, プレドニソロン投与により血小板が増加すると, いずれも低下する傾向を示した.血小板輸血を受けたITP以外の血液疾患患者において, 血小板輸血後の末梢血小板数が100×10<SUP>9</SUP>/L以下の症例ではPAIgG, PAIgM, PAIgA, PAC3が正常と比較して有意に高かった.また, 輸血量の増大に伴って, PAIgG量が増加する傾向がみられた.<BR>immunoblot 法を用いて, 特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) 患者, 全身性エリテマトーデス (SLE) 患者および血小板輸血患者の血清中抗血小板抗体の対応抗原を検討した.出現するバンドの種類として, 非還元系ではGPIb monoclonal抗体と反応する血小板抗原と同位置に出現したBand4, そしてGPIIb/IIIamonoclonal抗体と反応した血小板抗原と同位置に出現したBand-2が, ITP, SLEおよび血小板輸血例いずれの疾患群においても高率に出現し, 疾患による差異は認められなかった.出現したバンド数でも各疾患間に明かな差異は認められず, 複数のバンドを認める症例が相当数認められた.また, 対応抗原はBand-1やBand-2に限らず, その他のバンドも認められ, 還元系でも6種類のバンドが頻度の差はあるものの, いずれの疾患群にも出現し, 非還元系と同様疾患による差異を認めなかった.ITP, SLEおよび血小板輸血患者はそれぞれの対応抗原の多様性において同様な結果を示し, immunoblot法による検索では上記疾患の鑑別はできなかった.