著者
小泉 明裕
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.105-111, 2003-04-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
15
被引用文献数
4 8

鮮新-更新統,加住礫層上部の泥層から大型のイヌ属,Canis(Xenocyon)falconeriの骨格化石が発掘された.化石包含層の上位層に挾まれる第2堀之内タフの年代が約1.6Maと推定されることなどから,本報告のイヌ属化石の年代は1.8Ma前後と考えられる.本骨格化石は広い範囲に分散した産出状態を示すが,1個体分のものと考えられる.臼歯の大きさは,現生種ハイイロオオカミCanis lupusの亜寒帯地域に生息する亜種の大きさに匹敵する.裂肉歯の形態は,上顎第1大臼歯のhypoconeがprotoconeよりも小さく,遠位側に位置し,下顎第1大臼歯のentoconidがhypoconidに比べてかなり小さいが,舌側に独立した咬頭で,hypoconidよりもやや近位にあり,中程度に純肉食性に特殊化している.また,上顎第4前臼歯は低冠歯で,protoconeが小さく,下顎第3大臼歯がある.このイヌ属化石の産出は,日本の鮮新-更新統から初めての記録であり,日本の鮮新-前期更新世の脊椎動物相の成立を検討する上で,重要な価値を持つものである.