著者
早川 由紀夫 由井 将雄
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-17, 1989-05-31 (Released:2009-08-21)
参考文献数
23
被引用文献数
22 10

The eruptive history of the Kusatsu Shirane volcano is well described by means of 14 beds of key tephra and intercalating loess soil. Three eruptive stages are recognized. During early or middle Pleistocene the Matsuozawa volcano was formed; this is the first stage. The second stage was initiated by effusion of the Horaguchi lava, which was followed by eruptions of the Oshi pyroclastic flow, older lava flows, 3P pumice fall, and Yazawahara pyroclastic flow. Brown loess soil about 10m thick covering these deposits indicates that a dormant period of more than 100, 000 years followed this stage. The summit area upheaved about 400m or more against the foot of the volcano during this period, as is suggested by the extraordinarily steep (6.1°-3.0°) surface of the Oshi ignimbrite plateau. The third stage, which started about 14, 000 years ago, is the formation of three pyroclastic cones on the summit and contemporaneous effusion of the younger lava flows, e. g. the Kagusa lava of 7, 000 years ago and the Sessyo lava of 3, 000 years ago. In historic times, phreatic explosions have frequently occurred on the summit crater, Yugama. This means that the present belongs to the third stage. It is unlikely that eruptions of the third stage are caused by cooling of the magma chamber which was active in the second stage. The activity of the third stage seems to denote arrival of a new magma chamber at shallow depth.
著者
Shigeo SUGIHARA Isao TAKAHARA Mamoru HOSONO
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
The Quaternary Research (Daiyonki-Kenkyu) (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.29-39, 1972-05-25 (Released:2009-08-21)
参考文献数
33
被引用文献数
2 2

This thesis was written of the topography and volcanic ash layers (the so-called Kanto Loam) of the Musashino upland extending over the western region of Tokyo Metropolis. The results are summarized as follows:1) The geomorphic surfaces of the Musashino upland may be divided into Yodobashi, Narimasu, Akabane, Nakadai and Tachikawa terraces from older to younger in order. These terraces are covered with the volcanic ash layers. It was found that the older terraces are covered with the thicker volcanic ash layers, compared with the younger terraces.2) In classifying Yodobashi and Narimasu terraces, two pumice beds, namely SIP and Pm-1 found in the volcanic ash layers are used as key beds. In the case of Akabane and Nakadai terraces, TP would be used as key bed.3) Beneath the sediments of Yodobashi and Akabane terraces, observed are drowned valley features. Those valleys are filled up with marine sediments representing each of the transgression periods. The amounts of transgression are estimated several ten meters with Yodobashi terrace, and several meters with Akabane.
著者
鈴木 毅彦 早川 由紀夫
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.105-120, 1990
被引用文献数
15 11

Five distinctive tephra beds (A<sub>1</sub>Pm-A<sub>5</sub>Pm), carrying abundant biotite and quartz crystals, are widely distributed in central Japan. They are here collectively called Omachi APms or APms in short, and are petrographically identified by high refractive indices of hornblende (n<sub>2</sub>=1.685-1.696) and orthopyroxene (γ=1.728-1.737). One bed of the APms is found as far as 239km from the presumed source, Momisawadake in the Hida Mountains, where it is 4cm thick and composed mainly of silt-sized glass. No proximal deposit made up of coarse pumice fragments is found owing to unfavorable preservation of the mountainous landscapes; however, the eruption style is supposed to be of plinian type based on analyses of grain size along the dispersal axis.<br>Assuming that the accumulation rate of loess soil has been constant at each locality, the age of APms is estimated 0.24-0.33 Ma by the overlying soil thickness. Moreover, in the south Kanto district, one of the APms is intercalated between two well-established marker-tephra: GoP (0.25-0.30Ma) and TE-5 (0.35-0.40Ma). It is very likely that the age of APms is 0.30-0.35Ma. The time interval between A<sub>1</sub>Pm and A<sub>5</sub>Pm eruptions is estimated to be less than 0.05Ma, because the thickness of the soil layer intercalatcd between APms does not exceed 106cm at any locality.<br>The Omachi APms are found on the flanks and slopes of many volcanoes in central Japan, such as Azumaya, Yatsugatake, Kusatsu Shirane, and Takahara. They are also found among deposits forming fluvial terraces in north Kanto. The significance of APms as Middle Pleistocene time-markers will be established hereafter.
著者
吉川 周作 水野 清秀 加藤 茂弘 里口 保文 宮川 ちひろ 衣笠 善博 三田村 宗樹 中川 康一
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.505-520, 2000-12-01
被引用文献数
17 24

神戸市東灘区魚崎浜で掘削された東灘1,700mボーリングコアの火山灰層序を明らかにした.本コアは,基盤の花崗閃緑岩(深度1,545.7m以深)と,それを不整合に覆うK1-L層・K1-U層から構成される.淡水成のシルト・砂・砂礫主体のK1-L層(深度1,545.7~691.8m)は,朝代火山灰層に対比できるK1-1382火山灰層を挾み,大阪平野地下の都島累層と陸上部の大阪層群最下部・下部下半部に相当する.海成粘土層と淡水成の砂礫・砂・シルトの互層からなるK1-U層(深度691.8~23.3m)は,31層の火山灰層を挾み,大阪平野地下の田中累層と大阪層群下部上半部~段丘堆積層に相当する.本層中のK1-648,K1-566,K1-537,K1-488とK1-486,K1-444,K1-422,K1-351,K1-348ないしK1-347.4,K1-245,K1-223,K1-175,K1-141,Kl-101,K1-26火山灰層は,イエローIIないしIII,ピンク,光明池III,山田III,アズキ,狭山,今熊II,八町池I,八町池II,カスリ,港島I,鳴尾浜IV,八田,甲子園浜III~VI,平安神宮の各火山灰層に対比された.この火山灰対比により,19層の海成粘土層を,それぞれMa-1,Ma0,Ma0.5,Ma1,Ma1.3,Ma1.5,Ma2,Ma3,Ma4,Ma5,Ma6,Ma7,Ma8,Ma9,Ma10,Ma11(1),Ma11(2),Ma11(3),Ma12層に対比した.
著者
岩淵 洋
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.303-314, 2000-08-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
31
被引用文献数
5 2

内湾に潜在する活断層の検出と,基盤の形状を明らかにすることを目的として,大阪湾および伊勢湾において反射法音波探査を実施した.大阪湾には,大阪湾断層,津名沖断層のほか,いくつかの活断層が潜在している.活断層が基盤に変位を及ぼしているために,大阪湾の基盤形状は複雑であり,これを埋積する堆積層の厚さは2,700m以上に達する.大阪湾断層の北部で行ったボーリング調査では,断層が千数百年前に活動したことが示唆される.伊勢湾には伊勢湾断層,鈴鹿沖断層,白子-野間断層が伏在している.伊勢湾においても,基盤形状は複雑である.堆積層の厚さは1,700m以上ある.伊勢湾断層北部におけるボーリング調査では,断層が更新世後期以降動いていないことが明らかとなった.
著者
後藤 直
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.285-302, 1994

朝鮮半島の原始農耕は, 近年の集落遺跡発掘調査と栽培穀物遺体発見例の増加によって, 耕地・耕作具など不明の部分もあるが, その輪郭が明らかになりつつある. 畑作農耕は, 中国東北地方新石器時代の畑作農耕の伝播により, 有文土器時代中頃 (紀元前4,000~3,000年) に始まったと推定される. 次の無文土器時代 (紀元前1,000年) に農耕社会が形成され, この時代には水稲農耕が始まった. 暖かさの指数の等値線分布と畑作・水稲耕作の分布はほぼ対応し, 漢江流域より北では畑作が主で, 水稲耕作はほとんど行われなかった. 漢江流域以南では畑作とともに水稲耕作が行われ, 水稲耕作は南ほど盛んであった.<br>農耕集落遺跡の立地は5つにわけられる. (1) 山間部の河川中・上流部の河川沿い, 曲流部, 合流部の河岸段丘などは, 漁撈・狩猟・採集にも適し, 小集落, 支石墓が点在するが, 狭隘なため耕地の拡大と農耕社会の発展には限度がある. 水稲への依存度も低い. (2) 河川中流から下流の平野部の河岸段丘や中洲と, (3) 小平野や谷底平野に面する低丘陵に立地する集落は, 畑作農耕・水稲農耕いずれの場合も耕地の拡大が可能であり, 農耕社会発展の中心であった. ここに支石墓のほか, 地域的・政治的統合を示す青銅器副葬墓が多い. (4) 山頂に立地する遺跡は少なく, 何らかの事情による特殊例であろう. (5) 海岸部には農耕をほとんど行わない漁撈民の遺跡も立地する. かれらは, とくに南海岸では海上交易の担い手として, 内陸部の農耕集落と結びついていた.
著者
宍倉 正展 宮内 崇裕
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.235-242, 2001-06-01
参考文献数
28
被引用文献数
1 5

房総半島南部沿岸には,過去の地震に伴う地殻変動を記録した離水海岸地形が複数のレベルに発達する.その詳細な調査に基づくと,1703年元禄関東地震に伴う地殻上下変動は従説とは異なり,南端での隆起と保田,小湊での沈降を伴った北への傾動運動であることが明らかになった.また本地域には,元禄関東地震や1923年大正関東地震と同様の2つのタイプの固有地震が離水海岸地形から確認され,元禄型地震は完新世最高位旧汀線の離水より4回,大正型地震は6,825~6,719cal yrs BP以降少なくとも11回発生している.大正型地震の再来間隔は,離水海岸地形の年代からみて380~990年,最高位旧汀線高度から成分分析した平均再来間隔は290~760年と推定される.沿岸低地の完新世における地形形成は,くり返し発生した元禄型・大正型地震に伴う地殻変動の累積変位に強く影響を受けており,特に海面に対して沈降を伴う元禄型地震時の変動に規定されて多様な発達過程を示す.
著者
岡本 透 大丸 裕武 池田 重人 吉永 秀一郎
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.215-226, 2000-06-01
参考文献数
30
被引用文献数
2 6

下北半島北東部の太平洋岸には,砂丘砂や泥土に覆われたヒバの埋没林が各所に認められる.この埋没林の形成期は,約2,600~2,000年前,約1,000~850年前,約500年前,および現代である.調査地域に分布する砂丘砂中に認められる埋没腐植層の年代は,<sup>14</sup>C年代値と白頭山苫小牧火山灰の年代から,約5,300年前,約2,700年前,約1,000~900年前,約600~500年前,そして約200年前に区分された.埋没腐植層の年代により,調査地域に分布する砂丘の形成期は,約5,000年前以降,約2,500年前以降,約1,000年前以降,約600年前以降,約100年前以降と推定された.約2,500年前以降は,砂丘の形成期の年代とヒバ埋没林の形成期の年代とがほぼ一致するため,ヒバ埋没林の形成には砂丘砂の移動が大きく関与している.約2,600~2,000年前のヒバ埋没林は,その年代と分布から,約3,000~2,000年前の小海退にともなう砂丘砂の移動によって形成された.約1,000年前以降に形成された砂丘については,人為的影響によって形成された可能性がある.<br>一方,調査地域周辺には,約700~500年前の製鉄遺跡が数多く分布し,江戸時代後期にも南部藩などによって製鉄が試みられている.砂鉄採取のための砂丘の掘り崩しや,製鉄用の木炭を得るための沿岸部における森林伐採といった人為的影響によって,約600年前以降と約100年前以降に砂丘砂の移動があった.それにともなって,約500年前,現代の年代を示すヒバ埋没林が形成された.
著者
河村 善也
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.1-12, 1992
被引用文献数
3 3

帝釈峡遺跡群に属する観音堂, 堂面, 穴神, 馬渡の4遺跡から産出した哺乳動物化石の層序学的な分布を, 現在までに得られた資料をもとにまとめた. これらの遺跡から産出した哺乳類の約69%は現在もこの地域に生息する種類で, その大部分は後期更新世の後半から連続してこの地域に生息していたものと考えられる. 一方, 全体の約19%は現在この地域には分布しないが, 他の地域には生息している種類で, これらは後期更新世から完新世にかけてのいろいろな時期に, この地域から絶滅したと考えられる. 残りの12%は絶滅種で, それらはすべて後期更新世末までに絶滅したと考えられる. 現在この地域に分布しない種類や絶滅種のこの遺跡群における消滅層準の年代は, 32,000から21,000年BPの間 (ヒョウ), 21,000から16,000年BPの間 (ニホンモグラジネズミ, ヒグマ属, ゾウ科の動物), 16,000から12,000年BPの間 (ニホンムカシハタネズミ, ブランティオイデスハタネズミ), 10,000年BP頃 (ヤベオオツノシカ), 6,000から5,000年BP頃 (オオヤマネコ) で, これらの年代は各種類の本州におけるおおよその絶滅時期と対応する可能性が高い.
著者
兵頭 政幸
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.1-20, 2014
被引用文献数
1

近年,地磁気逆転期の百年〜千年スケールの磁気・気候層序が明らかになってきた.大阪湾掘削コアの海水準プロキシは海洋酸素同位体ステージ(MIS)19の歳差周期シグナルをもつ.同コアでは,マツヤマ−ブリュンヌ(MB)逆転トランジションは海水準のハイスタンド19.3以前に小反転エピソードで始まり,ハイスタンド19.3とロースタンド19.2の間の海面低下期に終了する.終了直前には小反転が多発する.気候の最温暖化はMB逆転直後,最高海面の約4,000年後に起こる.同様のMB逆転磁場の特徴が中国レス,インドネシア・サンギランの更新統,歳差周期シグナルをもつ深海底堆積物の記録でも見られる.MB逆転直後の最温暖化はバイカル湖,ヨルダン峡谷,地中海沿岸でも起こっている.MIS31でも最高海面から4,000年遅れて地磁気逆転直後に最温暖化する.これら温暖化の遅れは,逆転期に増加した銀河宇宙線が誘起する寒冷化が最高海面付近で起こったことが原因の可能性が高い.
著者
堤 隆
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.205-218, 2003-06-01
参考文献数
57
被引用文献数
1

日本の後期旧石器時代は,未較正の<sup>14</sup>C年代で3.3万年前から1.3万年前のおよそ2万年間存続し,時期的にはAT降灰期前後を境に前半と後半に区分される.本稿では,前半期を前葉と後葉に,後半期を前葉・中葉・末葉に区分し,各時期の石器群の様相について,特に寒冷気候への適応に注目して概観した.前半期前葉は局部磨製石斧と台形様石器に,前半期後葉は石刃技法の成立やナイフ形石器の登場に,後半期前葉は石器群の地域性の発現に,後半期中葉は尖頭器石器群などの地域的展開に,後半期末葉は列島全域におよぶ細石刃石器群の展開によって特色づけられる.<br>後期旧石器時代前半期前葉に登場する掻器と呼ばれる石器は,後期旧石器時代の諸石器群にあまねく伴う石器ではなく,時空的な偏りをもって保有される石器である.とくに掻器は高緯度地域に濃密に分布する傾向があり,使用痕分析から導き出される皮なめしという機能推定とあいまって,防寒のための毛皮革製品製作用具であることがうかがえ,寒冷環境への適応を物語る石器として重要視される.<br>後期旧石器時代の編年を地域ごとにいかに精緻に組み立て,同位体ステージで示されるような環境イベントとの対応関係をどのように読み取るかは,後期旧石器時代研究の今日的な課題のひとつである.掻器の存在は,最終氷期最寒冷期のより寒冷な環境への人類の適応戦略の解読を可能としている.
著者
早川 由紀夫 由井 将雄
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-17, 1989
被引用文献数
5 10

The eruptive history of the Kusatsu Shirane volcano is well described by means of 14 beds of key tephra and intercalating loess soil. Three eruptive stages are recognized. During early or middle Pleistocene the Matsuozawa volcano was formed; this is the first stage. The second stage was initiated by effusion of the Horaguchi lava, which was followed by eruptions of the Oshi pyroclastic flow, older lava flows, 3P pumice fall, and Yazawahara pyroclastic flow. Brown loess soil about 10m thick covering these deposits indicates that a dormant period of more than 100, 000 years followed this stage. The summit area upheaved about 400m or more against the foot of the volcano during this period, as is suggested by the extraordinarily steep (6.1°-3.0°) surface of the Oshi ignimbrite plateau. The third stage, which started about 14, 000 years ago, is the formation of three pyroclastic cones on the summit and contemporaneous effusion of the younger lava flows, <i>e. g.</i> the Kagusa lava of 7, 000 years ago and the Sessyo lava of 3, 000 years ago. In historic times, phreatic explosions have frequently occurred on the summit crater, Yugama. This means that the present belongs to the third stage. It is unlikely that eruptions of the third stage are caused by cooling of the magma chamber which was active in the second stage. The activity of the third stage seems to denote arrival of a new magma chamber at shallow depth.
著者
山崎 晴雄 水野 清秀
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.447-460, 1999-12-01
被引用文献数
2

国府津・松田断層の地震テクトニクス上の位置づけに関しては,現在二つの異なる見解が示されている.一つは,相模トラフ内のセグメントとは独立に活動し,丹沢山地や大磯丘陵を持ち上げる大磯型地震を引き起こすというものである.もう一つは,関東地震を200~300年ごとに引き起こすプレート境界断層から分岐した副断層の一つであり,関東地震と連動することなしに大地震を起こすことはないという考えである.これを検証するため,断層崖の麓で5個所のトレンチ発掘調査を行い,最新の断層活動史を復元した.完新統に明瞭な断層変位は認められなかったが,地辷りや崩壊堆積物から3,000年間に4ないし5回のイベントが識別された.このうち,大規模なイベントは約3,000年前の1回だけで,これが同断層の活動を示すと考えられる.ほかの小規模なイベントは,相模トラフで発生した大地震の可能性があるが,その頻度は数百年という短い間隔ではない.
著者
横山 卓雄
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.271-286, 1999-08-01

A.D.79年のヴェスヴィオ火山噴火による噴出物は2つの基本的な要素に区分できる.ポンペイ降下軽石層,ポンペイ・サージ層の2つである.ポンペイ降下軽石層は主として降下軽石からなり,ポンペイ・サージ層は火砕流堆積物,土石流堆積物,降下火山灰層などを含んでいる.火砕流は,少なくとも6回古代都市ポンペイに来襲した.それらの堆積物をPS-1~PS-6と名付けた.また,2層の土石流堆積物(PD-1とPD-2)がみられる.<br>家の壁を倒したり,壁・瓦などの破片といった家屋材の大きい塊を含んでいたりすることからみて,最も力の強かったのはPD-2土石流堆積物である.PS-3をもたらした火砕流もまた人間の頭蓋骨や,やや大きい木を切っているので強力であった.<br>A.D.79年のヴェスヴィオ火山の活動で噴出したポンペイ降下軽石は30~40分間で降下した.ヴェスヴィオ噴火からの火山噴出物によって,多数の建物や塔は完全に埋没したわけではないこと,噴火直後地表面には人工物の破壊された跡がまだみえる状態で残っていたということが想像される.<br>ヴェスヴィオ噴火の火山活動と火山噴出物の堆積のタイム・テーブルの素案が提唱された.
著者
澤 祥 太田 陽子 渡辺 満久 鈴木 康弘
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.233-240, 2000-06-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
20
被引用文献数
3

庄内平野東縁南部松山町の活断層は,活断層研究会(1991)により確実度IIIとされていたが,更新世後期から完新世に活動を続けた長さ約7kmの活断層であることが明らかになった.これを松山断層とよぶ.松山断層は,撓曲変形と断層背後での逆傾斜を変位地形の特徴とし,東上がりの逆断層と考えられる.松山断層の鉛直平均変位速度は0.2~0.7m/kyrsである.松山断層は酒田衝上断層群の位置とほぼ一致し,酒田衝上断層群の第四紀後期の活動の現れと解釈される.
著者
三田村 宗樹 中川 康一 升本 眞二 塩野 清治 吉川 周作 古山 勝彦 佐野 正人 橋本 定樹 領木 邦浩 北田 奈緒子 井上 直人 内山 高 小西 省吾 宮川 ちひろ 中村 正和 野口 和晃 Shrestha Suresh 谷 保孝 山口 貴行 山本 裕雄
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.179-188, 1996-07-31 (Released:2009-08-21)
参考文献数
19

1995年兵庫県南部地震は,阪神地域に甚大な被害を生じさせた.阪神地域は都市化の進んだ場所で,人工的な地形改変が多くの場所で行われている.しかし,現在の地形図上では,その箇所が不明確であるため,過去の地形図との比較から人工改変地形の抽出を行ったうえで被害分布との関連を西宮・大阪地域について検討した.大阪地域では,基盤断層の落下側に被害が集中する傾向があり,基盤構造との関連性が存在することを指摘した.これについては,既存地下地質資料をもとにした地震波線トレースのシミュレーションの結果から,地震波のフォーカシング現象がかかわっているとみている.結論として,日本の大都市の立地する地盤環境は類似し,地震災害に関して堆積盆地内の厚い第四紀層での地震動増幅,伏在断層付近でのフォーカシング,盆地内の表面波の重複反射よる長時間震動継続,表層の人工地盤や緩い未固結層の液状化など共通した特性を有していることを指摘した.
著者
及川 輝樹
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.141-156, 2003-06-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
108
被引用文献数
12 11

飛騨山脈の火成活動の消長と,山脈の隆起により生産された礫層の形成時期には,よい同時性が認められる.それは,2.5~1.5Ma(Stage I)と0.8~0Ma(Stage III)における火山活動の増大と周辺堆積盆への礫層の供給の時期であり,その間の1.5~0.8Ma(Stage II)には火山活動が低調で,周辺堆積盆における礫層の堆積が停止している.このことから,飛騨山脈は,激しい火成活動を伴いながら,3Ma以降に2度大きく隆起しているといえる.既知の広域テクトニクスの解析結果と隆起モデルから,各時期の隆起メカニズムを考察する.Stage Iでは伸張から中間応力場下での地殻へのマグマの濃集と地殻の厚化によるアイソスタティックな隆起が考えられる.一方,Stage IIIでは,この地域が圧縮場に変化し,マグマの熱によって弾性的厚さが薄くなった地殻が座屈変形し隆起したモデルが考えられる.このように飛騨山脈は,大規模なマグマの貫入・定置・熱の影響と,伸張から圧縮場への広域テクトニクスの変化とが合わさって形成された山脈といえる.
著者
斎藤 文紀
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.235-242, 1998-07-31 (Released:2009-08-21)
参考文献数
55
被引用文献数
36 36

東シナ海における最終氷期の海水準を明らかにするため,今までに報告されている350を超える放射性炭素年代値と最近の音波探査などの報告を検討した.この結果,50,000~25,000yrs BPについては,黄海や東シナ海において三角州の発達が認められ,当時の海水準は黄海で-80±10m,東シナ海で-90±10mと推定された.また最終氷期最盛期については,海成層と陸成層の分布深度や海底地形などから,最低位海水準は-120±10mと推定された.これらの値は従来報告されている値よりも浅い.
著者
松井 裕之 多田 隆治 大場 忠道
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.221-233, 1998-07-31 (Released:2009-08-21)
参考文献数
50
被引用文献数
49 51

最終氷期極相期における日本海低塩分化事件を定量的に説明し,陸橋成立の可能性を議論するために,浮遊性有孔虫殻酸素同位体比から日本海表層水古塩分変化を復元した.そして,復元した古塩分変動を定量的に説明するために,塩分収支モデルを用いて日本海へ流入する海水量の時代変化を計算し,それをもとに海峡水深の時代変化を推定した.その結果,LGMにおける対馬海峡の海峡水深は2~9mと見積もられたが,この値は海峡内の海底地形から直接的に推定された値10~30mよりやや浅い.海底地形に基づく海峡水深推定値と調和的な解を求めるためには,古塩分見積値を誤差範囲内で大きめにした上で,対馬海峡における流速を現在の半分まで弱める必要があり,この場合,LGMの推定海峡水深は~10mと求まった.また,最終氷期極相期における海水流入量は500km3/y以下と推定される.このようなわずかな海水流入量は,津軽海峡での潮汐流による海水交換でも説明できることから,最終氷期極相期に対馬海峡が漂砂により埋積した場合,ごく短期間陸橋が成立した可能性を否定できない.