- 著者
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剱物 充
小泉 益朗
永山 善久
- 出版者
- 日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.B0666, 2008 (Released:2008-05-13)
【目的】出生体重1000g未満の超低出生体重児は、近年の出生数増加と救命率の向上の一方、いかに障害なき生育に導くかが課題の1つといわれている。我々は、超低出生体重児の運動発達の経緯を調査し、理学療法(以下PT)施行上の要点について検討したので報告する。【方法】対象は平成16年10月から平成18年10月までの2年間に当院新生児医療センター(以下NICU)に入院した超低出生体重児41例中、脳性麻痺の診断を受けず、独歩獲得までフォローできた19例である。方法は以下の3点について調査した。1)対象群をNICU入院中からPTを開始した群と対照群に分類し、周産期状況として在胎週数、出生体重、入院期間、IMV施行日数、アプガースコア(1分)、同(5分)、そして呼吸窮迫症候群と新生児慢性肺疾患の罹患率を比較した。2)対象群を在胎27週未満と27週以上の2群に分類し、独歩獲得時の修正年齢を比較した。また対象群を出生体重750g未満と750g以上の2群に分類し、同様に独歩獲得時修正年齢を比較した。3)対象群をNICU入院中からPTを開始した群と外来でPT開始した群、そしてPT施行なしの3群に分類し、頸定、肘這い位、寝返り、床上座位、四つ這い移動、つかまり立ち、つたい歩き、独歩の各発達指標到達時の修正年齢を比較した。尚、2群間の比較にはマン・ホイットニ検定を、3群間の比較には一元配置分散分析法を、そして独立性の検定にはフィッシャーの直接確立計算法を用いた。【結果】1)周産期状況の比較では、出生体重においてNICU入院時PT開始群(n=5,607.2±92.0g)と対照群(n=14,833.1±116.5g)との間で有意差が認められた(p<0.05)。その他の項目では有意差は認められなかった。2)独歩獲得時修正年齢の比較では、在胎27週未満群(n=11)と27週以上群(n=8)の間に有意差は認められなかった。また、出生体重750g未満群(n=10)と750g以上群(n=9)との間にも有意差は認められなかった。3)NICU入院時PT開始群(n=5)、外来時PT開始群(n=5)、PTなし群(n=9)の3群間における各発達指標到達時修正年齢についても有意差は認められなかった。【考察】独歩を獲得する超低出生体重児の運動発達は、各発達指標の到達状況からみると比較的順調な経緯を辿るといえる。しかし運動発達に関するハイリスク児としてPTが開始される場合、筋緊張や姿勢・動作パターンなど様々な問題点を体験する。Lailaによれば在胎32週未満の児では、特に縦方向への移動において、満期産児と比べバランス反応における筋出力で問題を生じるとしている。一方、これらの状況には精神発達遅滞(以下MR)の関与を窺わせる例も存在する。Shepherdによれば、MR自体の重症度にも依存するが、早期の介入が発達を刺激する効果を持つとし、腹臥位の重要性や、固有感覚入力による運動促通などについて指摘している。PTではこれらの点を考慮し、両親を巻き込みながら支援していくことが要点の1つではないかと考えられる。