著者
市原 雅也 依田 知久 小泉 貴子 斉藤 美香 平野 浩彦 山口 雅庸
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.104-109, 2004-09-30 (Released:2014-02-26)
参考文献数
12

特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) は血小板が減少する後天性疾患であり, ITPの患者において口腔症状が頻繁に観察される。本来ITP治療の第一選択は副腎皮質ステロイド療法であり, ついで摘脾, 免疫抑制療法の順序である。そのほかに標準的な治療に反応しない, いわゆる難治例では免疫グロブリン大量静注療法 (IVIg療法) などが適用される。また最近, H.pylori陽性ITP症例における除菌療法の有効性が注目され厚生労働省によるITPの新しい診断基準, 治療プロトコールの作成が行われている。今回, われわれは口腔症状を呈したITP症例2例を経験したのでその概要を報告する。症例1は87歳, 男性, 口腔内出血を主訴に受診した。口腔出血, 血腫, 体幹の紫斑がみられITPと診断された。止血処置およびIVIg療法を施行された。その後血小板回復がみられ, 咬傷および感染予防のため抜歯を行った。症例2は69歳, 女性, 口腔内腫脹を主訴に受診した。ITPと診断されており, H.pylori除菌療法を受け, 血小板の回復がみられたために歯肉腫脹の原因歯を抜歯した。その後の経過は順調で後出血はみられなかった。