著者
小清水 右一
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

1. マウスPB-カドヘリンのcDNAクローニングに成功し,その胎児期における発現様式の検討を行なった. Northern blotではPB-カドヘリンは胎生9日齢ごろよりその発現が認められ,胎生後期にかけてその発現量の上昇がみられた. より詳細な発現部位を明らかにするためin situ hybridizationを行なったところ,きわめて特異的なPB-カドヘリンの発現様式が確認できた. すなわちPB-カドヘリンは胎生10日齢では神経管と肢芽にのみシグナルが観察できる. 神経管における発現は腹側に限局して認められ,また将来小脳形成のオーガナイザー領域として機能する中脳-後脳境界領域(いわゆる峡脳)に特に強い発現が認められた. 一方,肢芽における発現はその後端,いわゆるZPA(zone of polalizing activity)領域に限局しており,その後,指骨軟骨凝集塊にその発現部位が変化する. PB-カドヘリンのこの様な発現様式は各種組織・器官の形成に関与する形態形成関連遺伝子,特にShhやFGFファミリー,wntファミリーの各種因子の発現とよく似ており,PB-カドヘリンの発現がこれらの因子により制御されている可能性を推測させるものである.2. マウスおよびヒトPB-カドヘリン遺伝子のゲノムクローニングを行った. マウスに関してはすでにほぼ全長に相当する領域の構造決定を済ましており,現在,マウスおよびヒトにおける染色体マッピングを行っている.3. dominant-ncgalivc型PB-カドヘリンを小脳形成領域に特異的に発現するトランスジェニックマウスの作製を試みた. その結果,すでに5系統のトランスジェニックマウスを得ることに成功しており,順次,その表現型の解析を進めている.