1 0 0 0 OA 生卵の熱分析

著者
小澤 康弘
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.33, no.12, pp.813-820, 1986-12-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
24
被引用文献数
1

試料測温部を工夫した示差熱分析装置を用いて,生卵を熱分析した.(1) 卵黄部は,比較物質として加熱凝固卵黄を用いた場合,81℃に中心をもつ単一吸熱スペクトルを示した.(2) 濃厚卵白部,水様卵白部は共通して,65℃に中心をもつ第1吸収と,79℃に中心をもつ第2吸収とが観測された.(3) 水様部では,第1吸収と共に比熱が変化し,かつ60℃以下で,13%グリセリン水溶液と熱的に等価であり,かつ,オボアルブミン水溶液と熱的に類似した.(4) 濃厚部では,比熱変化は起らず,60℃以下で加熱凝固卵白と熱的に一致した.又,食塩を加えると水様化し,そのサーモグラムは水様部のそれに類似した.(5) 以上により,水様部の比熱変化は二次相転移によるものであり,かつ,水様部は濃厚部の相が変化したものであると考えられる.(6) 他に,s-ovalbmin化,溶媒和効果,水和効果,結合水の相転移の可能性,卵白の構造等について論じた.(7) 以上の考察により,濃厚部は準固相の状態にあり,相転移はオボアルブミンを中心としたタンパク質によって起る,と結論した.