著者
小澤 朝江
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、近代初の一工事専従の国家的組織である皇居造営事務局について、建築技術者の人員編成における近世大工組織との関係を検討するものである。特に、製図等の実務を担当した図工に注目し、宮内庁書陵部所蔵史料により、明治21年の残務掛廃止までに在籍した62名の採用・就業状況、出自、退職後の異動先を検討し、同時期に進捗した東本願寺造営の関係者や、大工家出身の専任技師の兄弟・子弟の採用が目立つこと、退職後は半数以上が省庁等の専任技術者に着任し、図工の経歴が設計職としての足掛かりになったことを指摘した。また、宮大工出身の手中千代太郎を例に、日記から採用経緯や職務の具体像を明らかにした。