著者
小濵 聖子 大槻 明
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.150-155, 2012-05-20 (Released:2012-07-31)
参考文献数
11

本研究では,近代日本人の教養をもちシベリア抑留経験をした石原吉郎(1915-1977)の現代詩を手がかりとして,言語表象にみられる作者の教養的知識と他者に伝達される作者の経験との関係について,思想史学的視点から考察する.方法には,計量テキスト分析を用いる.これは,詩の解釈において客観性を高める点で有益な新しい試みであると思われる.検証の結果,石原の詩には多くの語彙と,特に一人称代名詞の多用が見られた.これは思想史的には近代日本人の自我の探求を意味し,詩的には読み手の共感を促す重要な性質を意味する.結果として,計量テキスト分析の手法は石原の詩の解釈研究のために妥当な試みであることが提示でき,新しい解釈もできたと考える。