著者
小玉 恭子
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.33-36, 1986-03-15

交流教育の必要性が叫ばれている現在,交流保育も近年注目されつつある。このような社会的状況のなか本研究では,旭川聾学校幼稚部と旭川天使幼稚園との8年間にわたる交流保育の実践について,幼稚園側の視点から捉え,交流保育の成立過程および進展の様子をたどり,交流保育において保育機関の担うべき役割を明確にしていくことを目的として,両校の職員などの面接調査および交流保育実践の参加観察を行った。この交流保育は,自然なかたちでスタートして8年間経過しているが,黎明期・発展期・充実期を経て,その都度,実践的反省をくりかえしながら真の交流保育を目指している。この過程の分析から結果として得られたことは,両校の子ども達の間で友だちとしての意識がめばえてきたことや,子ども達だけの交流にとどまらず親にも交流の輪が広がってきたことである。これに加えて,子ども達の真の交流を願うなら,教師同士が忌憚なく意見を交わすことができる土壌をつくることが,交流保育の根底となるべきであるということが明らかとなった。保育機関では,このような交流のなかから,子ども達相互の正しい理解と仲間意識をもたせることが可能である。しかし,交流の本当の成果というのは,それを義務教育の場,さらには広く地域社会へもつなげてゆけるような子ども達の育ちをみとどけた時に確証されるものと考える。