著者
増田 達也 小田 卓治 野田 衛
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.527-531, 2015-07-05 (Released:2015-08-05)
参考文献数
5
被引用文献数
2 1

糖化学分野で主に用いられている屈折旋光計について,清酒醸造における発酵工程管理にも応用することができるかについて検討した.実際の市販酒に供する規模(総米2トン)の清酒醸造現場において経時的に清酒もろみのサンプリングを行い,旋光度と屈折率を同時に計測した.屈折旋光計から得られた清酒もろみの旋光度の値は国税庁所定分析法で求められたエキス分(比重エキス分)と良い直線性(r=0.976)を示し,また既定のショ糖濃度換算ではなくグルコース濃度に換算することで,実際の清酒醸造において比重エキス分と近い値が得られた.次に屈折率から求められる清酒もろみのアルコール分を含んだ外観Brix(apparent Brix)値からエキス分を引くことで,清酒もろみに含まれるアルコール分を推定したところ,実際の分析によるアルコール分と良い直線性(r=0.952)が得られ,また特に四段添加前で実際のアルコール分析値に近い値が得られた.以上から,屈折旋光計は清酒醸造の発酵管理工程にも応用でき,迅速かつ簡易な分析方法として有用であることが分かった.