著者
浜野 文三江 小田 吉哉
出版者
日本プロテオーム学会
雑誌
日本プロテオーム学会誌 (ISSN:24322776)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.15-26, 2022 (Released:2022-08-05)
参考文献数
64

プロテオミクスは過去25年間,質量分析を中心に発展してきた.特にショットガンLC/MS(Liquid Chromatography/Mass Spectrometry)は,アミノ酸配列などのデータベースさえあれば種を問わず膨大な数のタンパク質同定を可能にした.しかしLC/MSによる定量では精度管理などがあまり行われず,特に血漿プロテオミクスでは幾つかの課題が残ったままである.そこで登場してきたのがProximity Extension Assay(PEA)である.これはイムノPCR(Polymerase Chain Reaction)と言われる抗体とオリゴヌクレオチドの増幅を組み合わせた手法である.特異性を確保しながらLC/MSでは検出が難しい血中サイトカインなどの分析を容易にし,定量に関しては信頼性保証を意識した手法である.1000人以上を対象にした血漿・血清検体測定に応用され,最近ではタンパク質の種類も3000以上が定量可能になった.今後は血漿タンパク質の探索同定はLC/MS,定量解析は抗体パネルという使い分けが本格化するかもしれない.
著者
古市 真木雄 和賀 巌 小田 吉哉
出版者
日本プロテオーム学会
雑誌
日本プロテオーム学会誌 (ISSN:24322776)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.55-63, 2020 (Released:2020-12-15)
参考文献数
33

近年,質量分析技術の発展や新技術の出現により,大規模な疾患プロテオーム研究事例が増えてきた.本報告では,血液中の数千種類のタンパク質を同時に解析できる修飾型人工DNA配列(アプタマー)を用いたAffinity Proteomics技術に焦点を当てて,多数の検体が用いられている最近の大規模研究を中心に幾つかの研究例を報告する.今回紹介する技術の特徴は,まず抗体の代わりに数千種類の修飾型アプタマーを準備し,血液中の各標的タンパク質に特異的に結合させ,洗浄し,標的タンパク質と結合したアプタマーのみを遺伝子チップで捕捉して定量する,つまりタンパク質を遺伝子のようにマイクロアレイ上で測定する技術である.本法は多検体測定と定量性に優れていることから臨床応用例が多い.国内における臨床プロテオーム研究分野の発展と社会実装の一助になると考えて最新動向を総説として記述した.