- 著者
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宗村 佳子
木本 佳那
小田 真悠子
奥津 雄太
加藤 玲
鈴木 康規
齊木 大
平井 昭彦
秋場 哲哉
新開 敬行
貞升 健志
- 出版者
- 公益社団法人 日本食品衛生学会
- 雑誌
- 食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.6, pp.260-267, 2017-12-25 (Released:2017-12-28)
- 参考文献数
- 35
- 被引用文献数
-
6
2017年2月,東京都内で食中毒が4事例発生した.患者は10の学校にわたり,このうち7校および1校では,それぞれ別の共同調理場で調理された給食を提供されており,2校では自校で調理した給食を喫食していた.全事例に共通して提供されていたものは,同一業者が2016年12月に製造した刻みのりであった.喫食者4,209名のうち,1,193名(28.3%)が胃腸炎症状を呈し,リアルタイムRT-PCRによる検査の結果,4事例の患者265名中207名(78.1%)からノロウイルス(NoV)GIIが検出された.刻みのり31検体が検査に供されたが,このうち7検体(22.6%)がNoVGII陽性となった.刻みのり7検体と4事例に由来する患者20検体のNoV ORF1/2ジャンクション領域302塩基の配列は一致し,その遺伝子型はGII.17であった.また,次世代シークエンサーによる解析により,患者検体からほぼ全長(7,420塩基)のNoV塩基配列が得られたが,同株は系統樹解析でHu/GII/JP/2015/GII.P17_GII.17/Kawasaki308株と同じクラスターに属した.これらの結果から,今回の4事例は同一刻みのりを感染源としたNoVGII.17によるものであると断定された.刻みのり検体の水分活性は0.119~0.129であり,NoVは乾燥状態でも2か月間は感染性を失わないことが疫学的に示された.本事例の解決を発端として,刻みのりが関連したNoVGII.17による大規模なdiffuse outbreakの国内発生が明らかとなった.