著者
長岡 杏月 小田嶋 裕輝
出版者
大分県立看護科学大学看護研究交流センター
雑誌
看護科学研究 (ISSN:24240052)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.50-57, 2023 (Released:2023-05-24)
参考文献数
21

【目的】筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に関する闘病記より、患者の全人的苦痛を表現した内容を明らかにすることにより、医療上の示唆を得ることを目的とした。【方法】楽天ブックスの書籍検索機能を活用した。具体的には、「筋萎縮性側索硬化症」または「ALS」のキーワードを入力し、ハンドサーチで過去3年分の書籍を探索したところ、3件が抽出された。次に、3件について、全人的苦痛の内容を整理し、共通して見られた特徴を分析した。【結果】全人的苦痛の実相として、身体的苦痛6カテゴリー、精神的苦痛7カテゴリー、社会的苦痛2カテゴリー、霊的苦痛3カテゴリーが抽出された。【結論】本研究より、身体的苦痛の予防・緩和に向けた医療者の丁寧な関わりを積み重ねること、多職種連携による包括的な医療者の介入により精神的苦痛の緩和を図ること、患者が他者との社会的関係をできる限り維持できるような環境づくりを行うことの必要性が示唆された。
著者
小田嶋 裕輝 河原田 まり子
出版者
札幌市立大学
雑誌
札幌市立大学研究論文集 = SCU journal of Design & Nursing (ISSN:18819427)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.15-23, 2015-06-30

国内外における首尾一貫感を改善する介入に焦点を当てた文献を整理し,患者の首尾一貫感を改善する上で必要な介入の示唆を得ることを目的とした.2014年6月までに発表された文献を対象に,CINAHL,医学中央雑誌を用いて検索した.Patient, Sense of Coherence に,Intervention 又は Program の用語を含む海外文献を,また,患者,首尾一貫感に,介入又はプログラムの用語を含む日本語文献を検索した.目的に該当した文献として,国内文献3件と海外文献5件を本研究に活用した.いずれの研究においても,介入前後で首尾一貫感の得点は有意に改善したことを報告していた.患者対象の研究内容は,患者の抱える具体的な問題や,健康的な生活習慣の維持に必要なことなどに焦点を当てていた.患者以外を対象とした研究内容は,禁煙という具体的な問題に焦点を当てるものや,具体的な焦点は定めず,健康増進のためのプログラムとして実施するものがあった.これらの支援には,患者が疾患をコントロールしながら生活していけるように支えること,患者に対する治療の選択肢や体の状態に関する理論的な情報提供をすること,患者の思いを分かち合えるようにすることなど,首尾一貫感の下位概念に即した支援の性質が認められた.患者の首尾一貫感を改善するためには,首尾一貫感の下位概念に即して,疾患コントロールのための療養生活支援,治療や体の状態に対する情報提供,患者との思いを共有する支援が必要であることが示唆された.