著者
小町 芳樹 牧田 俊明 小西 隆介 寺本 純司
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2019-OS-146, no.2, pp.1-9, 2019-05-23

近年では,Linux を用いて NFV 環境を構築する場合などに高性能なネットワーク機能を要求されるが,Linux カーネルのネットワークスタックは高度に複雑化しているためオーバヘッドが大きく,性能面での要求を満たすことが難しい.こういった仮想ネットワークの性能を柔軟に改善する技術として,現在では XDP が注目を集めている.XDP は,Linux カーネルが提供する多様な機能を活かしつつ,ユーザが実装したプログラムを安全にカーネルに挿入できる eBPF を利用して,高速なネットワーク機能を実装できる技術だが,eBPF で挿入されるプログラムは実装面での制約が厳しいため,実用化の妨げになっている.そこで本研究では,難易度の高いネットワーク機能の実装を隠蔽する方式について検討を行った.本稿では一例として,eBPF による機能の挿入を既存の API を通じて透過的にライブラリもしくはカーネル内部で行うことで,従来の操作との互換性を保ちつつ,高速な転送機能を備えた L2 スイッチが実現できることを確認した.さらに隠蔽化の検討を通して,現在の eBPF に不足する機能や課題をユーザビリティの観点で整理し,eBPF そのものに対しても解決すべき課題を明らかにする.