著者
鷲津 優維 牧田 俊明
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2022-OS-156, no.12, pp.1-9, 2022-07-20

今後,5G/6G の普及により,大容量・低遅延を活かしたサービスが MEC 上において展開されることが予測される.また,コンテナ技術が広まることで,この MEC においてもコンテナの利用が予測されるが,Kubernetes などのコンテナ基盤では,ネットワークの様々な機能をソフトウェア実装するため,性能面のオーバヘッドが大きくネットワーク性能向上においてボトルネックとなりうる.このオーバーヘッドの抜本的な解決のために,物理マシン上においてコンテナ基盤を展開する場合,ハードウェアオフロードという手法が存在する.一方で,柔軟性向上等の目的で VM 上においてコンテナ基盤を展開する場合,ゲスト内で動作するコンテナ基盤の管理ソフトウェアから,直接ホストのハードウェアオフロードを制御できないため,この手法を適用できない.そこで,本研究では,VM 上において動作するコンテナ基盤において,ゲストから制御可能なハードウェアオフロードを用いて高速化するために,SR-IOV を用いたホストの仮想ファンクション (VF) をゲストに物理ファンクション (PF) として認識させる手法を検討した.本稿では,SR-IOV の L2 スイッチング機能に対応した,VM 上の仮想ネットワークのハードウェアオフロードを実装し,ネットワーク性能の向上を,スループットとレイテンシの 2 点で確認した.また,SR-IOV の L2 以外のパケットヘッダマッチ機能にも対応させ,コンテナネットワーク機能をオフロードするための実装方針の検討と,それにあたっての課題を述べる.
著者
小町 芳樹 牧田 俊明 小西 隆介 寺本 純司
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2019-OS-146, no.2, pp.1-9, 2019-05-23

近年では,Linux を用いて NFV 環境を構築する場合などに高性能なネットワーク機能を要求されるが,Linux カーネルのネットワークスタックは高度に複雑化しているためオーバヘッドが大きく,性能面での要求を満たすことが難しい.こういった仮想ネットワークの性能を柔軟に改善する技術として,現在では XDP が注目を集めている.XDP は,Linux カーネルが提供する多様な機能を活かしつつ,ユーザが実装したプログラムを安全にカーネルに挿入できる eBPF を利用して,高速なネットワーク機能を実装できる技術だが,eBPF で挿入されるプログラムは実装面での制約が厳しいため,実用化の妨げになっている.そこで本研究では,難易度の高いネットワーク機能の実装を隠蔽する方式について検討を行った.本稿では一例として,eBPF による機能の挿入を既存の API を通じて透過的にライブラリもしくはカーネル内部で行うことで,従来の操作との互換性を保ちつつ,高速な転送機能を備えた L2 スイッチが実現できることを確認した.さらに隠蔽化の検討を通して,現在の eBPF に不足する機能や課題をユーザビリティの観点で整理し,eBPF そのものに対しても解決すべき課題を明らかにする.