著者
佐藤 孝治 小西 隆介 木原 誠司 天海 良治 盛合 敏
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.110-122, 2009-03-25

本論文では,ログ構造化ファイルシステムNILFSの設計と実装について述べる.NILFSは任意の時点におけるファイルシステムのスナップショットを作成することができ,ソフトウェア障害やユーザエラーからデータを保護する.また,ディスク上のデータ構造はつねに一貫した状態に保たれるため,システム障害後の迅速な復旧が可能である.従来のログ構造化ファイルシステムとは異なり,ディスクアドレス変換を用いることにより,複数のスナップショットが存在する状況で,クリーナは不要になったディスク領域を効率的に回収することができる.評価実験により,NILFSはExt3と比べて遜色ない性能を有することを示す.
著者
小町 芳樹 牧田 俊明 小西 隆介 寺本 純司
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2019-OS-146, no.2, pp.1-9, 2019-05-23

近年では,Linux を用いて NFV 環境を構築する場合などに高性能なネットワーク機能を要求されるが,Linux カーネルのネットワークスタックは高度に複雑化しているためオーバヘッドが大きく,性能面での要求を満たすことが難しい.こういった仮想ネットワークの性能を柔軟に改善する技術として,現在では XDP が注目を集めている.XDP は,Linux カーネルが提供する多様な機能を活かしつつ,ユーザが実装したプログラムを安全にカーネルに挿入できる eBPF を利用して,高速なネットワーク機能を実装できる技術だが,eBPF で挿入されるプログラムは実装面での制約が厳しいため,実用化の妨げになっている.そこで本研究では,難易度の高いネットワーク機能の実装を隠蔽する方式について検討を行った.本稿では一例として,eBPF による機能の挿入を既存の API を通じて透過的にライブラリもしくはカーネル内部で行うことで,従来の操作との互換性を保ちつつ,高速な転送機能を備えた L2 スイッチが実現できることを確認した.さらに隠蔽化の検討を通して,現在の eBPF に不足する機能や課題をユーザビリティの観点で整理し,eBPF そのものに対しても解決すべき課題を明らかにする.