著者
渡部 将太 長谷川 健 小畑 直也 豊田 新 今山 武志
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.307-324, 2023-04-06 (Released:2023-04-06)
参考文献数
64

二岐山火山の活動は,溶岩流ステージと溶岩ドームステージに大別される.溶岩流ステージの活動は,約16~9万年前には東~南~西部へ主に溶岩流を繰り返し流出し(合計1.57 km3 DRE),約9~8万年前には北部に大規模な溶岩流を流出した(合計約1.99 km3 DRE).その後の溶岩ドームステージ(約9~5万年前の間)では山体中央部に小規模な溶岩ドームを形成した(合計約0.09 km3 DRE).噴出率は約16~9万年前で低く,約9~8万年前で最大となり,それ以降は低くなる.本火山では珪長質マグマと苦鉄質マグマの混合が支配的である.溶岩流ステージと溶岩ドームステージとの間でマグマの化学組成が明瞭に変化し,異なる2つの混合トレンドが認められる.両ステージ間の苦鉄質マグマの化学組成の違いはかんらん石と輝石の分別で,珪長質マグマの化学組成の違いは,同一の地殻物質の部分溶融度の違いでそれぞれ説明可能である.