著者
〓田 孝 小竹 利明 竹内 真一 MAXIMOV Trofim C. 吉川 賢
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 = Journal of the Japanese Forestry Society (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.246-254, 2002-11-16
参考文献数
43
被引用文献数
2

東シベリアの永久凍土地帯に成立する<I>Larix gmelinii</I>林の水分動態と土壌水分, 飽差との関係について考察するために, 林分の水利用量 (<I>SF</I>) と環境要因の季節変化を測定した。<I>SF</I>は開葉直後から急激に増加し, 6月上中旬の展葉の終了する時期に最大 (2.7mmd<SUP>-1</SUP>) となった。<I>SF</I>はその後, ピーク値の75%の値まで低下したが, その値は7月終わりまで維持されていた。<I>SF</I>には飽差の増大による頭打ちが認められた。土壌体積含水率が気孔コンダクタンスに及ぼす影響を調べた結果, 飽差が20hPa未満の領域では気孔コンダクタンスが土壌体積含水率の減少に対して直線的に低下する傾向が認められた。ただし, 飽差が20hPa以上の領域では, 飽差の影響による蒸散の頭打ちが顕著となるため, 土壌体積含水率と気孔コンダクタンスの関係は不明瞭になった。<I>L. gmelinii</I>は, 当地のような寡雨地帯で生育していくために, 土壌の水分状態に応じて気孔コンダクタンスを調節することで体内水分の損失を防ぎ, 水ストレスを回避していると考えられた。