著者
小笠原 〓
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.7, no.6, pp.665-680, 1975-12-31 (Released:2008-11-10)
参考文献数
16

1.調査は,東北大学植物園において,エナガ群の動態を明らかにする目的で,1961年7月から1962年1月に56回,1962年4月から1963年4月に124回のセンサス及び1960年から1964年の間に一般観察によって行った。2.エナガ(Aegithalos caudatus trivirgatus)の年周期活動を記載し,シジュウカラ(Parus major minor)のそれと比較した。3.エナガは,その群生活を中心にした,季節的にきわめて特徴的かつ興味ある生活様式をもっている。シジュカラの年周期活動はエナガのそれと多少異なり,繁殖期はエナガが一般的に早いことが認められた。4.エナガの繁殖個体数は秋季-冬季群の個体数とほぼ等しい。1962年にマークした16羽のヒナのうち,1羽(♂)は1963年,1964年にそのヒナが巣立ちした巣の近くに営巣した。さらに,この個体は1962年,1963年及び1964年にそれぞれ夏季群および秋季-冬季群にも認められた。5.エナガの冬季群の各個体は翌春,その採餌行動範囲内に留まり,その地域に分散営巣するものと思われる。このように秋季群及びその群行動はエナガの地域的繁殖個体群の大きさを決定するのに,重要な役割をしているように思われ,もしそうであるとしたら,すでに植物園で繁殖のためにすみついているのであり,植物園はエナガにとっては繁殖のための地域であると考えられる。
著者
小笠原 〓
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.351-362, 1968-12-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
7
被引用文献数
3 4

調査は1965年11月から,1966年1月までに,キジ,ヤマドリの生態分布及び食性を明らかにするために仙台市周辺及び,秋田県北秋田郡田代町周辺で行なった。冬期,キジ,ヤマドリの生息場所及び生息範囲は,対照的であるが,その分布はかなりオーバラップしている。すなわち,仙台市周辺では,キジの生息範囲はかなり広いが,ヤマドリは主に山地に限られ,一方田代町周辺ではヤマドリの分布範囲が広く,キジは主に米代川沿に多く分布し,さらに,キジの個体数は,仙台市周辺の方が,田代町周辺より多いように思われる。捕獲した鳥は,キジが仙台市周辺で12個体,田代町周辺で2個体,岩手県で1個体で,計15個体,一方ヤマドリは,仙台市周辺で4個体,田代町周辺で1個体の計5個体で,それぞれについての食性調査を行なった。食餌物の全般的配分では,キジでは植物質が全体の99.6%,動物質が0.4%,一方,ヤマドリでは,植物質が全体の99.8%,動物質が0.2%と,両種とも,そのほとんどが植物質であった。さらに,植物質では,キジで37種,ヤマドリで20種が同定できた。仙台市周辺のものでは,キジ,ヤマドリともに,植物の種実が多く,それぞれの77.4%,75.1%を占めていた。田代町のものでは,キジで全体の91.2%が種実であった。植物の種実を,木本類,草木類,つた類と大別すると,仙台市周辺では,キジ(GP),ヤマドリ(CP)では,それぞれ,草木類で,42.2%(GP),44.5%(CP),木本類が,10.4%(GP),12.4%(CP),さらに,つた類では,43.3%(GP),43.1%(CP),となり,草本類及びつた類の種実が多かった。また植物質を科別にみると,キジでは,マメ科,イネ科,ブドウ科,タデ科の種実及びヤマノイモ(ムカゴ)が多く,一方ヤマドリではマメ科,タデ科,ヒユ科,ミズキの種実及びシダ類葉片が多かった。動物質は,きわめて少なく,わずかに5種類にすぎなかった。