著者
大高 明史 神山 智行 長尾 文孝 工藤 貴史 小笠原 嵩輝 井上 栄壮
出版者
日本陸水學會
雑誌
陸水學雜誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.113-127, 2010-08-25
参考文献数
49
被引用文献数
1 4

湧水で涵養される湖列である津軽十二湖湖沼群・越口の池湖群(北緯40°)で,湖水循環のパターンと底生動物の深度分布を調べた。秋から春までの連続観測により,越口の池湖群には,通年成層しない湖沼(青池,沸壺の池),冬季一回循環湖(落口の池),二回の完全循環が起こる湖沼(越口の池),春の循環が部分循環で終わる湖沼(王池)という,複数の循環型の湖沼が混在していることが示唆された。これには,水温が一定の多量の湧水の流入や,冬期間の結氷の厚さや持続期間,有機物の分解に伴う底層での塩類の蓄積が関連していると推測された.落口の池と王池の底生動物群集の構成や現存量は,溶存酸素濃度に応じて深度とともに明瞭に変化した。酸素が欠乏する深底部上部にまで見られる種類は,イトミミズとユリミミズの2種の貧毛類とユスリカ属の一種など4分類群のユスリカ類で,他の山間の富栄養湖と共通していた。源頭に位置する青池と沸壺の池のふたつを除く7湖沼は,循環型が異なるにもかかわらず,いずれも成層期には深水層で溶存酸素が欠乏し,深底部下部に底生動物は見られなかった。自生的,他生的な有機物の負荷が高いため,成層期に湖底で速やかな酸素消費が起こるためと推測される。