著者
村松 郁栄 小見波 正隆
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
防災科学技術研究所研究資料 (ISSN:0917057X)
巻号頁・発行日
vol.155, pp.1-841, 1992-12
被引用文献数
1

1891年10月28日の濃尾地震の約1カ月後, 東京帝国大学総長の名で全国的なアンケート調査が行われ, 強震動と地震の破壊力が調べられた。全国の約1, 400市町村からの回答が各県知事名でまとめられて約1年後に彼の所に戻った。1891年の濃尾地震はマグニチュード8.0で, 日本の内陸における最大の地震であり, 世界でも最大級である。震源は極めて浅く, 中部日本に発生し, しかも人口の多い濃尾平野の近くに発生した。したがって, その地震動は色々な地盤における極限値を示すものと考えられ, その被害も多種多様である。例えば, 色々な池の寸法と応答についての質問があり, それらは現在の大型石油タンクに対応する。この回答集は強い地震動および耐震設計の研究にとっての宝庫であると思う。これらの回答の原文は毛筆で書かれ県ごとにまとめられている。それらは東京大学地震研究所に保管されている。故河角広地震研究所教授は, 丁寧に書かれたそれらの手書きのコピーを編者の1人に預けられた。彼は1977年から1984年にかけて, 岐阜大学その他の機関の助けを借りてこれらを活字印刷にした。さらに, 当時の市町村名と現在名とを対応させた表も作った。しかし, これらの印刷物は利用しにくいものであった。したがって, 編者らはこれらを1冊にまとめ, 当時の市町村の位置を1ないし0.5分(約1km)の精度の緯度・経度で表し(表3), 当時の郡境の県ごとの地図を作成した(図2)。また参考資料として, 回答地点の震度を現行気象庁震度で定め(表3), 震度分布図および回答中に報告されている諸現象と気象庁震度との対応表を付け加えた(図3および表4)。