著者
小谷 鷹哉 田村 優樹 中里 浩一 石井 直方
出版者
一般財団法人 日本健康開発財団
雑誌
日本健康開発雑誌 (ISSN:2432602X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.79-86, 2020-06-19 (Released:2020-06-19)
参考文献数
15

背景・目的 筋力トレーニングによって骨格筋を肥大させることは、健康の保持・増進に重要である。本研究では、日本人が古くから習慣としてきた「入浴」が筋肥大効果を高める可能性に着目し、「筋力トレーニング後の入浴は筋肥大効果を高めるか?」を検証した。方法 本研究では、SDラットを「筋力トレーニング群」および「筋力トレーニング+入浴群」に分類し、左脚をコントロール脚とし右脚をトレーニング脚とした。筋力トレーニングについては、腓腹筋への電気刺激による等尺性収縮運動を10回×5セット行わせた。筋力トレーニングから3時間後に腓腹筋を摘出し、生化学分析を行った。結果・考察 骨格筋量は筋タンパク質合成と分解の出納バランスによって制御されることから、その両者を検討した。筋タンパク質合成の活性化において中心的な役割を担うmTORC1シグナル伝達系および筋タンパク質合成は、筋力トレーニングによって活性化されたが、入浴による影響は観察されなかった。筋タンパク質分解系において主要となるオートファジー系およびユビキチン系について、オートファゴソーム量の指標となるLC3-IIタンパク質量およびユビキチン化タンパク質量は筋力トレーニングにより有意に減少したが、入浴による影響は観察されなかった。これらの結果より、筋力トレーニング後の入浴は筋肥大効果を高めない可能性が示唆された。