著者
小賀 百樹
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

東シナ海の黒潮流入口における黒潮変動を調べるため,流入口直後に位置する海底電話線を、利用し黒潮流量変動を観測した。約9年分の観測資料に,衛星観測海面高度資料,漂流ブイによる表層流資料等を組み合わせ解析した結果,以下のことが明らかとなった。(1)流入直後の流量変動は,流入直前の台湾東岸沖の中規模渦の影響を強く受ける。暖水渦が存在すると流量が増加し,冷水渦が存在すると減少する。ただし,冷水渦の影響の方が強い。太平洋東方からの中規模渦の到来は不規則であるが,どちらのタイプの渦も年に数個到来し,年の半分くらいの期間は渦の影響を受けている。(2)不規則に到来する渦の効果をならすと季節変動が見られる。大きく「冬季モード」と「夏季モード」が認められる。冬季のルソン沖では黒潮流量が増加するが,ルソン海峡から南シナ海への流出があり,台湾東岸沖では減少傾向にある。さらに,東シナ海流入後の変動は小さくなり季節変動も明瞭でなく,東シナ海の中流以降は独自の変動も見られる。沖縄東方の黒潮への再循環もみられる。夏季は反対にルソン沖の流量は減少し南シナ海への流出もなく,沖縄東方の再循環も見られない。これらの流れの変動は,海上風の分布とも整合性がある。(3)付随して,琉球諸島と台湾を結ぶ定期フェリーによる海面水温の観測,東シナ海の吹送流の資料解析とモデル作成,東シナ海の黒潮影響下にある大気・海洋相互作用に関する資料解析にも取り組んだ。