著者
小泉 利光 安斎 徹 小野 典子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.743, 2003

【はじめに】当院は回復期リハビリテーション病棟を有し、自宅退院を目標に早期から退院前訪問指導(以下、家庭訪問)や患者家族に対して外泊を促している。そこで、今回、これらの取り組みが入院日数と関連性があるかを調査した。【対象】平成13年4月から平成14年3月までに当院の回復期リハビリテーション病棟から自宅退院した67例を対象とした。内訳は男性37例、女性30例、平均年齢71.54±11.13歳である。疾患は脳血管等疾患46例、脊髄損傷2例、大腿骨頚部骨折等の骨折13例、廃用症候群6例である。なお、内科治療等で回復期リハビリテーション病棟から一般病棟転棟後に自宅退院したものは除外した。【方法】調査項目は、初回家庭訪問日、外泊日、入院日数、当院入院日から初回家庭訪問日までの日数で、家庭訪問と外泊、家庭訪問と入院日数についての関連性を検討した。【結果】家庭訪問を実施した者は50例(74.6%)で、実施内容は環境整備や患者家族に対する生活・介護指導等である。一方、家庭訪問未実施者は17例(25.4%)で、障害が軽度で外泊時に問題がなかった者、以前に家庭訪問済みで環境整備が整っているため必要性が少ないと判断した者、家族の受け入れが不十分で実施できなかった者などである。なお、初回家庭訪問までの平均日数は64.26日であった。 当院入院後の初回外泊の傾向としては、家庭訪問以前に初回外泊し訪問後も何度か外泊した者50例中14例(28%)、家庭訪問当日にそのまま初回外泊した者6例(12%)、家庭訪問後1ヶ月以内に初回外泊した者10例(20%)、2ヶ月以内に初回外泊した者9例(18%)で、家庭訪問実施者の54%は訪問後に初回外泊をしていた。一方、家庭訪問を実施したものの一度も外泊せずに退院した者が5例(10%)、家庭訪問以前に初回外泊し訪問後外泊せずに退院した者4例(8%)であった。 入院日から初回家庭訪問日までの日数と入院日数はr=0.64(p<0.001)と高い相関を示した。なお、平均入院日数は116.60日であった。【考察】早期家庭訪問は退院後の在宅生活をイメージしたアプローチが可能である。また、外泊は患者家族に対する退院への意識付けができ、自宅での介護力の評価や新たな問題点の抽出、家屋改造後のリチェックなどその意義も大きい。今回の結果より家庭訪問実施者の54%は訪問後に初回外泊をしており、家庭訪問は外泊を促す一要因と考えられた。 また、早期家庭訪問は入院日数の短縮にも寄与していると考えられた。これは家庭訪問が早いほど、先に述べた外泊協力も得ながら具体化した目標・問題点に対してチームスタッフが連携して取り組めた結果の一つと思われた。