著者
小野 正芳 Masayoshi Ono 千葉経済大学 CHIBA KEIZAI UNIVERSITY
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = Chiba keizai ronso (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.50, pp.27-48,

2000年以降、社会保険・税ともにその負担は増してきた。社会保険料は年々増加し、減税措置はなくなり、所得控除も縮小されている。したがって、絶対額としての各個人の負担は高まっている。その一方で、その負担は高所得者に多く課されており、標準世帯全体としては、格差がより小さい状態へと向かっているといえる。どの世帯においても負担が増えながらも格差が小さくなっているということは、高所得者にかなりの負担がかかっているということでもある。
著者
小野 正芳
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.1-17, 2013-12-21

日本の財政再建に向けた第一歩として2014年4月から消費税が8%に、2015年10月から10%になることが決定している。しかし、GDPの2倍近くに迫る政府債務、GDPの8%に迫る毎年の財政赤字、国際的にかなり低い国民負担率といった点を考えると消費税の増税だけでは不十分である。そこでは国際的にみてもかなり低い水準にとどまっている所得税が増税の候補となりうる。一方で、所得税は景気に大きく影響される不安定な財源であるとの指摘がある。しかしながら、所得税の源泉となる給与収入と景気の関係はそれほど大きくなく、所得税収を不安定にしているのは主に所得控除項目である。特に、給与収入が高いほど配偶者控除や配偶者特別控除の適用割合が高くなっており、給与収入が高い者の納税額を減少させる要因になっている。また、社会保険料の負担増加も所得税を減少させる大きな要因になっている。現在の社会保障を維持するのであれば、社会保険料と所得税が相関をもたないように制度を設計すべきであろう。さらに、住宅借入金等特別控除も所得税を大きく減少させる要因になっている。住宅借入金等特別控除は、景気刺激を目的とした政策である。本来国庫に入るべき財が、住宅という個人の財の蓄積に回されているのであり、財政再建を考える場合には、その政策効果が十分に得られているのかを慎重に検討する必要がある。このように所得税を安定かつ大きな財源にするために、所得控除項目の見直しが急務である。
著者
小野 正芳
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.1-21, 2013-07-25

日本の財政再建に向けた第一歩として2014年4月から消費税率が8%に、2015年10月から10%になることが決定している。消費増税においては消費税収の安定度、消費課税の国際的水準という点から、その正当性が主張されている。しかしながら、消費税収の所得税収に対する相対的安定度、消費課税の国際的水準という点を詳細に検討してみると、それらが消費税増税の正当な根拠とはなり得ないことが明らかとなる。消費税収は所得税収よりも相対的に安定しているといわれているが、所得税収の大きな部分を占める給与収入に基づく税収に関していえば、消費税収よりもよほど安定している。結果的に所得税収が消費税収よりも不安定になっているのは、給与収入を給与所得に変換する際の手続き(各種控除)の影響であり、それは政府によってコントロール可能な要因である。また、消費課税の国際的水準について、税率という面でみれば確かに日本の消費課税の水準は低いといえるが、税額という面でみれば日本の消費課税の水準はそれほど低くない。むしろ、国際的水準でみれば所得課税の水準が低いのである。すなわち、日本においては消費税を増税すべきではなく、所得税を増税すべきである。本稿は、納税主体の大部分を占める個人を対象として、その経済的価値の流れという視点から課税関係を整理し、上記のような結論に至っている。