著者
小野 決
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.277-316, 1982-08-25

著者は1970年以来北海道におけるブユの分類学的研究を行なうため各地で多数の材料を採集飼育し,更にその習性特に吸血性について獣医学との関係を検討した。それらを要約すれば下記の通りである。1)北海道で1976年までに12種のブユが知られていたが,著者の調査により更に19種のブユが追加され,現在計31種のブユが北海道に産することが確認された。その19種の内訳は14新種,1新亜種が著者によって記載され,日本未記録2種が再記載され,北海道未記録2種が報告されている。2)分類学上,ハルブユ亜科,ハイイロオオブユ族を新らたに創設した。3)家畜に来襲吸血する種名の確認されたブユは次の通りである(表V参照) : オオブユ,キアシオオブユ,アオキツメトゲブユ,アシマダラブユ,ヒメアシマダラブユ,クロアシマダラブユ,スズキアシマダラブユ,アカクラアシマダラブユ。この内アシマダラブユはその最盛期(6月上,中旬)に放牧中の牛馬にはげしく来襲吸血つる最も重要な種である。4)ダイセンヤマブユは山羊に来襲吸血することが観察されたが,牛馬,人体に来襲することは観察されてしない。5)人体に来襲吸血する種名の確認されたブユは次の通りである(表V参照) : オオブユ,アオキツメトゲブユ,ニシジマツメトゲブユ-晩春。キアシオオブユ,キンイロオオブユ,アポイキアシオオブユ,アシマダラブユ,ヒメアシマダラブユ-初夏。ホロカアシマダラブユ,スズキアシマダラブユ,アカクラアシマダラブユ-晩夏,初秋。この内アシマダラブユは発生量が多く最もはげしく人体に来襲吸血する。6)キタクロオオブユ,ダイセツハルブユは高山地帯で群飛するが人体から吸血することは稀であり,恐らくこれらは鳥類から吸血するものと思われる。