- 著者
-
大宮 邦雄
渡邊 巖
西原 宏史
熊澤 修造
宮本 和久
魚住 武司
小野寺 一清
大宮 邦雄
- 出版者
- 三重大学
- 雑誌
- 基盤研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1995
水素ガスはクリーンなエネルギーとして注目されている。本研究ではヒドロゲナーゼ、ニトロゲナーゼ両システムの研究者が意見を交換しながら、水素ガス生産のために培養工学、遺伝子工学的方法で系を改良することをねらって研究を行った。小野寺は水素ガス発生能にすぐれているAzotobacterのミュータントを得た。またアンモニアで抑制されず、高い水素ガス発生能をもった窒素固定菌を土壌から分離した。いずれのアプロウチも今後の新微生物探索の方向を示唆する。魚住は窒素固定菌Azospirillum lipoferumのニトロゲナーゼ遺伝子の転写時および転写後のアンモニアによる活性抑制の機構解明を行い、高アンモニアで窒素固定活性が抑制されない菌TAIを作成した。熊沢は水素ガス発生能の高いらん藻の改良に取り組み、アンモニアによる窒素固定抑制のかからない条件では窒素ガス存在下でも水素ガス発生が継続することを明らかにした。いずれも、ニトロゲナーゼで水素ガスが発生するとアンモニアができにくくなることを考慮して、アンモニアでニトロゲナーゼ活性が抑制されないようにする試みである。西原は酸素ガスと熱に強く、酸性条件で水素ガス発生に強く傾いたヒドロゲナーゼを海洋性細菌Hydrogenovibrioから取り出した。このヒドロゲナーゼは酵素を利用した水素ガス発生に利用できそうである。浅田はらん藻に真正細菌のヒドロゲナーゼ遺伝子を組み込み、水素ガス発生の光エネルギー利用効率を高めようとした。宮本はNoxと二酸化炭素含有ガスを利用する海産微細藻類から乳酸菌と光合成細菌を使って水素ガスを高い効率で生産することに成功した。二酸化炭素削減技術のひとつの有望な方向を示すものである。大宮は難分解性物質からの水素ガス生産に利用するため、Clostridiumのキティナーゼ遺伝子を解析した。渡辺はアゾラと共生しているらん藻の水素ガス発生活性の窒素固定活性にたいする相対比はらん藻の窒素固定活性高いほど高くなるこを見いだした。これらの研究はいずれも水素ガス生物生産の今後の改良戦略の基礎となる知見を与えた。