著者
小野寺 伸 小山 芳一 西平 順
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1)RA患者由来滑膜繊維芽細胞を用い、MIFがIL-8のmRNA発現を誘導し、この誘導にはチロシンキナーゼ、PKC、および転写調節因子AP-1およびNF-κBが強く関与していることを明らかにした(Arthritis Rheum 2004)。2)In-vivoにおいてマウス抗II型コラーゲン抗体カクテル関節炎モデルを用いて関節炎発症におけるMIFの関与を検討した。野生型(以下WT)マウスは関節炎発症に伴い関節局所におけるMIF、MMP-13およびMIP-2 mRNAの発現が増加した。関節炎発症操作によりWTマウスでは関節炎スコア(12点満点)が平均8点であったのに対し、抗MIF抗体を投与したWTマウス群およびMIFノックアウトマウス群では、それぞれ平均3点、平均2.5点と有意に関節炎が抑制され、これに伴い後者2群とも関節局所におけるMMP-13およびMIP-2 mRNA発現、および炎症性細胞浸潤が抑制された。(Cytokine 2004)。3)MIFをターゲットとした新規関節炎治療法の開発;MIF-DNAワクチン法を試みた。MIF-DNAワクチンとしてMIF cDNAの2nd loopにヘルパーTエピトープとしてtetanus toxin、ovalbumin、およびHEL (hen egg-whitelysozyme)の各十数残基を組み込んだプラスミドベクター、コントロールとして空ベクターを準備し、これらを8週令Balb/cマウス♀(各群n=5)にエレクトロポレーション法にて筋内接種した後II型コラーゲン抗体カクテル関節炎発症を試みたところ、ピーク時の関節炎スコアはコントロールワクチン群で平均5.5点に対し、前3者の混合接種により平均2.0点と有意な発症抑制効果を示した。まだ検討途上であるが本方法は新規RA治療法として期待される(投稿中)。
著者
遠山 晴一 安田 和則 小野寺 伸 近藤 英司
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

マクロファージ遊走阻止因子(MIF)の腱・靱帯損傷の治癒に与える影響は明らかではない。そこでMIF遺伝子の欠損が膝内側側副靱帯(MCL)断裂後の治癒過程に与える影響を検討し、28日におけるMIFknock-outマウスの大腿骨-MCL-脛骨複合体の力学的特性およびMMP-2および-13の遺伝子発現はwildtypeに比し有意に低値であり、組織学的には肥厚しており血管新生に乏しくかつ細胞数の減少の遅延が観察された。以上よりMIF遺伝子欠損はMMPの遺伝子発現抑止を介して、MCL損傷治癒を遅延させることが示唆された。