著者
近藤 英司 安田 和則 近江谷 克裕 北村 信人
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

(目的)自家移植腱マトリクスを内在性線維芽細胞・基質複合体で被覆することにより腱マトリクス再構築に与える効果を明らかにすること。(方法)成羊40頭を2群に分けた。I群は前十字靱帯を切除し、自家半腱様筋腱を移植した。II群では内在性線維芽細胞・基質複合体で移植腱を被覆した。術後4および12週にて屠殺し、力学的・組織学的評価を行った。(結果と考察)膝安定性は、II群がI群に比べて有意に低値を示した。断面積はII群が有意に高値であった。固有知覚受容器および血管数は、II群がI群より有意に高値を示した。本研究は、内在性線維芽細胞・基質複合体による被覆が移植腱の再構築過程を促進させる可能性を示唆した。
著者
田邊 芳恵 安田 和則
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.347-353, 1988-07-10

自家腱を用いた膝前十字靭帯再建術後における早期筋力訓練プログラムを独自の基礎的研究をもとに作製した。大腿四頭筋に対しては70゜以上屈曲位での最大等尺性収縮訓練を, ハムストリングスに対しては任意の膝角度における収縮訓練を行った。また, 膝伸展位近くでは大腿四頭筋とハムストリングスの同時最大等尺性収縮訓練を指導した。新しい筋力訓練で治療した男11, 女8, 合計19人の術後1年時における大腿四頭筋トルクの対健側比は男性83%, 女性67%, ハムストリングストルクの対健側比は男性89%, 女性67%であった。新しい積極的な筋力訓練方法は, 従来の消極的な筋力訓練方法に比べて有意に優れた効果を認めた。
著者
長田 義仁 グン 剣萍 安田 和則 八木 駿郎 山本 眞史 川端 和重
出版者
北海道大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2002

(I)ソフト&ウエット人工筋肉となるゲル基本素材の創成基本素材とする高分子ゲルにダブルネットワーク-(DN)構造を導入することで、圧縮強度、引張り強度が数メガパスカル(MPa)に達する超高強度ゲルの合成法を発見した。さらに、DNゲルの第一網目における数10nm〜数μmスケールのVoid構造を系統的に変化させることで、ゲルをBrittleからDuctile的な振る舞いまで系統的に制御することに成功した。DuctileのDNゲルがNecking現象を示し、20倍までも伸びることを発見した。この優れたゲル材料を人工関節軟骨へ応用するために、低摩擦性、高強度性を併せ持ったゲルの創製を図り、その結果、破壊強度数十メガパスカル、破壊エネルギーが1000J/cm^2以上、表面摩擦係数10^<-5>〜10^<-4>という従来にないゲルの創成に成功した。(II)ゲル基本素材の生体代替運動システムへの応用展開(I)で創製したゲルは固体素材では実現不可能な柔軟性と運動性、そして耐衝撃性を併せ持つ。このゲルを人工軟骨、人工半月板に応用するために、その耐摩耗性、生体内耐久性、および生体親和性を評価した。数種類のDNゲルは100万回、走行距離延べ50kmのPinonFlat型摩耗試験で、摩耗率10^<-8>〜10^<-7>mm^3/N・mに達する高い耐摩耗性を示し、これは超高密度ポリエチレン(摩耗率10^<-7>mm^3/N・m)を凌駕する結果であり、ゲルの特性としては驚異的なものである。DNゲルのBlock皮下埋め込み試験、ペレット筋内埋め込み試験を行い、数種ゲルの中、PAMPS/PDMAAmゲルが人工軟骨の素材に最も有望であることを明らかにした。さらに、PAMPS/PDMAAmゲル人工軟骨を試作し、関節内埋植試験を行った結果、関節内異物特性は低く、使用した人工軟骨研究用標準動物モデルでは、明らかな有害性は検出されなかった。さらに、PAMPS/PDMAAゲル人工軟骨を関節表面から数mmのギャップを作るように埋植すると、この表面である生体内局所(ln situ)に正常関節(硝子)軟骨を自然再生することが出来るという、これまでの世界の常識を覆す発見をした。
著者
[ぐん] 剣萍 角五 彰 黒川 孝幸 古川 英光 田中 良巳 安田 和則
出版者
北海道大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2006

生体は硬い骨格を除き、殆どが50-85wt%が水分で構成されている軟組織からできている。豊かな福祉社会の実現には生体軟組織と同等の機能を持ったソフト&ウェットマテリアルの創製が不可欠である。本研究は、含水高分子ゲルの構造を制御することによって、生体軟組織に匹敵する高靭性と高機能を有する様々なソフト&ウェットマテリアルの創製に成功した。これらの材料は、軟骨・腱、血管などの生体軟組織の代替材料として応用できる。
著者
遠山 晴一 安田 和則 小野寺 伸 近藤 英司
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

マクロファージ遊走阻止因子(MIF)の腱・靱帯損傷の治癒に与える影響は明らかではない。そこでMIF遺伝子の欠損が膝内側側副靱帯(MCL)断裂後の治癒過程に与える影響を検討し、28日におけるMIFknock-outマウスの大腿骨-MCL-脛骨複合体の力学的特性およびMMP-2および-13の遺伝子発現はwildtypeに比し有意に低値であり、組織学的には肥厚しており血管新生に乏しくかつ細胞数の減少の遅延が観察された。以上よりMIF遺伝子欠損はMMPの遺伝子発現抑止を介して、MCL損傷治癒を遅延させることが示唆された。