著者
小野寺 康之
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ホウレンソウからは,雄株および雌株の他に雌雄双方の機能を備えた間性株も見出される.これらの多様な「性」はホウレンソウにおける効率的F1採種に必要な受粉制御技術を確立する上で重要な形質である.本研究では,性決定遺伝子座の構造解析を試みた.先ず,Y遺伝子座の解析からは,この遺伝子座を含む周辺領域は減数分裂期の相同組み換えが抑制された雄特異的領域であることが示唆され,この領域は少なくとも840 kbp以上である可能性が示された.さらに,この領域の一部の配列を決定した結果,大部分が新規のレトロエレメントで占められていた.その一方で,タンパク質コード候補遺伝子は僅かに4個しか見出されなかった.
著者
小野寺 康之
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ホウレンソウには雄花のみを着生させる雄株および雌花のみを着生させる雌株に加え、雌花と雄花あるいは両性花が様々な比率で混成する多様な間性が見出される。これまでの研究で、我々は花器形態に基づいて5種類の間性自殖系統を雌雄異花同株および雌花両性花同株の二つのタイプに分類できることを明らかにした。さらに、雌花形成割合(雌性率)および各間性形質の遺伝様式に基づいて、これらの間性系統の性型を4型(I型〜IV型)に分類した。本研究では、これまで解析に用いてきた間性系統の中で最も雌性率が低く、雌雄異花同株タイプに属する系統(03-336)が示す1型間性の発現を支配する遺伝子の同定を試みた。03-009♀x03-336によって得られたF1個体を雄株(系統03-009:XY)と交配してBC1世代を作出し、2007年4月から6月にかけてこのBC1集団を北海道大学構内のビニールハウス内で育成した。当該F1集団および前述のBC1集団のおよそ半数からY遺伝子マーカーが検出されたことに加えて、それらの全ての個体が雌性率0%(雄株)を示したことからY遺伝子はI型間性の発現を支配する遺伝子に対して優性もしくは上位性を示すと結論づけた.さらに、このBC1世代(169個体)において,雄株:間性株:雌株=2:1:1の比に適合する分離が生じていることも判明した(x^2検定,ρ=0.372).雌雄決定遺伝子XおよびYに加えてI型間性遺伝子としてM遺伝子を想定することによって,雄株:間性株:雌株=2:1:1(XY;Mm:XY;mm:XX;Mm:XX;mm=1:1:1:1)の分離が当該BC1世代で生じることが説明できる.