著者
小長谷 幸平 藤野 正也
出版者
富士山科学研究所
雑誌
富士山研究 = Mount Fuji Research (ISSN:18817564)
巻号頁・発行日
no.13, pp.1-16, 2019-02-01

本研究の目的は、明治時代から戦後にかけて、駿河湾を隔てて富士山を見る視点はいつ、どのようにして変化していったのかを明らかにし、富士山を見る視点の変化を論じることにある。明治後期から戦前の期間に発行された絵葉書を対象に、画面構成要素を記録してデータベース化し、クラスター分析と主成分分析を実施して絵葉書を分類し、富士山を見る視点および三保松原を含む景観を見る視点の変化を検証した。 その結果、駿河湾を隔てて富士山を見る視点は、「富士山を含む俯瞰景」という意味では衰退することなく評価されてきたと考えられた。その理由として、俯瞰景としての清見潟のエリアは視対象として衰退することがあったとしても視点場として損なわれることはなかったこと、また同様の俯瞰景を享受できる日本平エリアの視点場が開拓されていったことが要因として考えられた。一方、低地からの三保松原を前景とする富士山の景観は失われてきたことが示唆された。要因としては清水港湾内の開発・工業化が考えられた。