著者
藤野 正也 小笠原 輝 大脇 淳
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.16-25, 2020 (Released:2021-03-29)
参考文献数
35

本研究は草原の維持に対する地元住民の意向とそれに影響を与える要因を明らかにすることを目的に,現在も火入れによる草原管理が行われている山梨県南都留郡忍野村忍草区の住民を調査対象として,同地区にある高座山の草原に対する意識に関するアンケート調査を実施した。単純集計の結果,37.9%の住民が草原を現在も利用・管理しているまたは過去に利用・管理した経験があると回答した。また,多くの住民にとって草原が大切であることが明らかになるとともに,草原維持への意向も強いことが明らかとなった。直接利用が少なくても,高座山を間接的に利用していることを住民が認識しやすい状況にあることが影響していると考えられた。さらに,草原への関心度合いに影響を及ぼす要因を二項ロジスティック回帰分析で分析したところ,忍草区で生まれた人の方が草原を大切に思う結果となった。この理由として,地域への帰属意識が醸成される中で,高座山は先祖から引き継いだものであるという意識が醸成された可能性が考えられた。また,草原の直接利用がなくなり,間接利用だけになる場合,草原を維持できると考える人が少なくなることも考えられた。
著者
小長谷 幸平 藤野 正也
出版者
富士山科学研究所
雑誌
富士山研究 = Mount Fuji Research (ISSN:18817564)
巻号頁・発行日
no.13, pp.1-16, 2019-02-01

本研究の目的は、明治時代から戦後にかけて、駿河湾を隔てて富士山を見る視点はいつ、どのようにして変化していったのかを明らかにし、富士山を見る視点の変化を論じることにある。明治後期から戦前の期間に発行された絵葉書を対象に、画面構成要素を記録してデータベース化し、クラスター分析と主成分分析を実施して絵葉書を分類し、富士山を見る視点および三保松原を含む景観を見る視点の変化を検証した。 その結果、駿河湾を隔てて富士山を見る視点は、「富士山を含む俯瞰景」という意味では衰退することなく評価されてきたと考えられた。その理由として、俯瞰景としての清見潟のエリアは視対象として衰退することがあったとしても視点場として損なわれることはなかったこと、また同様の俯瞰景を享受できる日本平エリアの視点場が開拓されていったことが要因として考えられた。一方、低地からの三保松原を前景とする富士山の景観は失われてきたことが示唆された。要因としては清水港湾内の開発・工業化が考えられた。
著者
京井 尋佑 藤野 正也 栗山 浩一
出版者
日本農業経済学会
雑誌
農業経済研究 (ISSN:03873234)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.245-250, 2019-09-25 (Released:2019-12-25)
参考文献数
17

Eco-labeling schemes have been practiced in Japan to support eco-friendly farmers. Many previous studies have examined consumer preference on rice with eco-labeling which certifies its cultivation method. Most of those investigations, however, cannot sufficiently consider the variation of consumer preference. The objectives of this study are (1) analyzing the consumer preference about information on cultivation method and farmer, considering preference heterogeneity and (2) discussing the character of each consumer preference group. To achieve our purposes, we had an online questionnaire including a choice experiment and conducted latent class model estimation. The main outcomes are as follows. First, consumer preference on cultivation method, rice brand, and information on the farmer are heterogeneous. Second, consumers are likely to prefer the information on the cultivation method to information on the farmer. These results suggest to current eco-labeling schemes the importance of targeting a particular consumer group and providing proper information to each consumer group. Our results also suggest that consumers who prefer the information on the farmer are potentially becoming purchasers of conservation-agricultural products.
著者
藤野 正也 嶌田 栄樹
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

我が国林業の素材生産性を高めるには、現場レベルでPDCAが実践されることが必要である。その重要な基礎となるのが現場での作業日報である。しかし、多くの事業体ではタイムカードの代わりに作業日報が付けられているのが実態であり、日々の作業量や作業時間を記録し、作業実施計画等に活用している事例は少ない。その理由の一つに、作業日報を長期的に活用する方法が分かりづらいことが挙げられる。 本研究では10年以上にわたり作業日報を記録し続けている京都府の日吉町森林組合の協力の下、2012年4月から2015年9月までの作業員15人分の作業日報の解析を試み、作業日報の長期的活用方法の検討を試みた。作業現場は586筆あり、団地数は61に及んでいた。そこで1筆毎に伐倒本数、搬出材積、作業時間等を集計し、1筆毎の生産性を算出し、平均値等の比較を行った。その結果、フォワーダ搬出の生産性の変動係数が最も小さく、様々な条件下でも比較的安定した作業が行われていることが明らかとなった。