著者
小鷲 宏昭 西岡 大輔 山口 咲子 安達 恵利香 松岡 久美子 林 孝雄
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.231-237, 2017

<p><b>【目的】</b>色覚検査において正常と診断されても色弁別能が弱いものは、Low normal color visionと呼ばれる。今回我々は、色覚検査では正常色覚と診断できるが、アノマロスコープにて混色等色域の拡大がみられる、Low normal color visionと考えられた父娘例を経験したので報告する。</p><p><b>【症例】</b>17歳、女子。母親に色覚異常を指摘され来院した。今まで色覚検査を受けたことはなく、私生活においても不便さを感じていなかった。石原色覚検査表Ⅱで誤読3表、Panel D-15はminor errorsであった。アノマロスコープでは正常Rayleighにて混色30-40へ等色範囲の広がりがみられたが、1型・2型Rayleighでは等色は起こらなかった。日常生活では赤と茶、青と緑を誤認することがあった。後日、両親に色覚検査を施行し、母親は全検査において正常であった。父親は石原色覚検査表Ⅱにて誤読1表、Panel D-15はno errors、アノマロスコープにて混色35-40へ等色範囲の軽度な広がりがみられたが、色誤認の経験はなかった。</p><p><b>【結論】</b>父娘ともアノマロスコープにて等色域の拡大がみられたことから、Low normal color vision と考えられた。石原色覚検査表やPanel D-15においておおむね正常と判定されても、僅かな誤りがある場合はアノマロスコープで精査することが重要である。</p>