著者
尹 海圓
出版者
日本比較政治学会
雑誌
比較政治研究 (ISSN:21890552)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-20, 2021 (Released:2021-02-27)
参考文献数
70

本研究はテクノポリス政策の決定過程における日韓政府の対照的な方針転換、つまり、日本の地理的集中から分散への転換と、韓国の地理的集中から分散、再び集中への回帰という現象を説明するために次の仮説を提示する。経済分野において政治家と有権者がクライエンテリスティックな関係を結ぶ日本では、政策に伴う雇用保障の効果が特殊利益とみなされ、産業政策の支援対象は分散し福祉政策化する傾向が強い。一方、日本に比べ相対的にプログラマティックな関係に基づく韓国では、雇用保障が一般利益と見なされる時期を除き、産業政策の支援対象は集中する傾向が強い。テクノポリス政策は両国ともに当初は産業政策として構想されたが、日本では、本政策による雇用保障を特殊利益とみなした政治家の介入により、支援対象は分散し福祉政策的な効果が強まった。韓国でも、当時一般利益と見なされた雇用保障に対応する中で一時期支援対象が分散するが、経済成長が再び一般利益として重視されるにつれ、支援対象は集中し産業政策的な効果が強くなった。