著者
尾形 真史 依田 幸英 國分 泰雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OPE, 光エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.28, pp.11-16, 2004-04-16

本研究室では,超高屈折率差光導波路(HIC)を用いたマイクロリング共振器の高密度集積化ための製作技術として,バイアススパッタ成膜を利用した平坦化埋め込み技術を昨年度に開発していた.しかし,この方法ではコアをSiO_2などで完全に埋め込んでしまうため,コアとクラッドの屈折率差が小さくなり,マイクロリング共振器の放射損失が大きくなる問題があった.そこで本研究では,空気(真空)クラッド埋め込み構造を提案し,RFスパッタ成膜を用いてこの構造を簡単に実現するプロセスを開発した.この技術を用いて側方に空気クラッドを埋め込んだ積層マイクロリング共振器を製作したところ,リング半径5μmの素子から明瞭な共振スペクトルを観測し,FSR=31nmを実現した.また,従来のSiO_2で埋め込んだ構造と本研究の空気(真空)クラッドを側方に設けた埋め込み構造の両方を用いて,同じリング半径のマイクロリング共振器フィルタを製作して特性を比較したところ,本研究の素子は従来型に比べて狭帯域でスルーポート特性の阻止量も大きい良好な特性が得られた.この特性から共振器内損失を見積もったところ,本研究の素子では損失が10分の1に低減されたことが確認できた.