著者
津野 陽子 尾形 裕也 古井 祐司
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.291-297, 2018-08-31 (Released:2018-08-31)
参考文献数
14
被引用文献数
1

目的:従業員の健康・医療の問題を経営課題と捉え,経営戦略に位置付ける「健康経営」が推進されている.健康経営とは,健康と生産性のマネジメントを同時に行う手法である.健康と生産性の関連および職場要因と生産性に関する研究動向から健康経営と働き方改革について考察する.内容:職場における健康関連の生産性指標として,病欠,病気休業を指すアブセンティーイズムと何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し,業務遂行能力や生産性が低下している状態であるプレゼンティーイズムがある.この二つを合わせて生産性と捉えた場合,特にプレゼンティーイズムの損失が大きいことが注目されている.生産性と健康状態の間に相関があることを示す研究蓄積があり,健康リスクが多くなるほど生産性が低下することが示されている.健康と生産性の関連における研究枠組みには職場要因が含まれており,職場要因は生産性指標に直接的・間接的関連の両方を有していることが示されている.結論:健康と生産性を合わせてマネジメントするためには,職場要因への介入が必須であり,健康経営推進のためには働き方改革と一体として取り組むべきである.働き方改革といっても,各企業・組織の特性によって取り組むべき内容は異なる.各企業・組織において健康課題を可視化し,職場環境や仕事特性との関連性をデータを活用し検証することで,有力なエビデンスを持ってPDCAサイクルを回していくことが期待される.