著者
高橋 由香 津野 陽子 大森 純子
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
pp.2021-029-B, (Released:2021-12-05)
被引用文献数
1

目的:健康リスクを改善し生産性維持・向上に寄与することを促進するのは,単に介入プログラムの内容によるのではなく,「職場における健康文化(Workplace culture of health)」の醸成が重要であるというエビデンスが蓄積され始めている.先行研究において,従業員の主観的評価による組織の健康へのサポートに関する認識が高いほど,健康リスクやプレゼンティーイズム損失が小さいといったエビデンスが蓄積され始めており,健康経営においても従業員視点による評価が重要と考えられる.本研究では,従業員視点による職場における健康文化の指標を作成し,健康経営における従業員による主観的評価指標としての有用性を検討することを目的とした.方法:従業員の健康や生産性に関する職場における健康文化の文献レビューにより作成した指標20項目を用いてアンケート調査を実施した.対象はA県内の健康経営優良法人2019に認定された50組織の従業員を対象とした.協力の得られた25組織の従業員886名に調査票を配布し,分析対象者は435名となった.結果:大規模法人部門(ホワイト500)の43件,中小規模法人部門の263件,自社の認定部門が分からない群の123件の3群で分析を行った.大規模法人部門と中小規模法人部門の2群比較では,「健康保持・増進に関する全社方針の内容」,「健康問題が起きた時の対処手順」,「復職に向けた制度や支援」,「心をサポートする体制や支援」,「安全と健康に関する協議の場」は大規模法人部門で有意に良い結果であり,「上司による体調に関する声がけ」,「健康づくりに役立つ情報の提供」は中小規模法人部門で有意に良い結果であり,組織規模による特徴がみられた.一方,自社の健康経営優良法人の認定部門が分かる群と分からない群との比較では,全ての項目で認定部門が分からない群が有意に悪い結果であった.また,本指標は20項目全てで,職場における健康文化が良い結果である者の方が健康リスク数やプレゼンティーイズム損失が小さいことが確認された.考察と結論:従業員視点による職場における健康文化の程度を捉えられること,職場における健康文化は従業員の健康リスクや生産性に関連することが検証され,健康経営における従業員視点での評価指標として有用であることが示唆された.
著者
津野 陽子 尾形 裕也 古井 祐司
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.291-297, 2018-08-31 (Released:2018-08-31)
参考文献数
14
被引用文献数
1

目的:従業員の健康・医療の問題を経営課題と捉え,経営戦略に位置付ける「健康経営」が推進されている.健康経営とは,健康と生産性のマネジメントを同時に行う手法である.健康と生産性の関連および職場要因と生産性に関する研究動向から健康経営と働き方改革について考察する.内容:職場における健康関連の生産性指標として,病欠,病気休業を指すアブセンティーイズムと何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し,業務遂行能力や生産性が低下している状態であるプレゼンティーイズムがある.この二つを合わせて生産性と捉えた場合,特にプレゼンティーイズムの損失が大きいことが注目されている.生産性と健康状態の間に相関があることを示す研究蓄積があり,健康リスクが多くなるほど生産性が低下することが示されている.健康と生産性の関連における研究枠組みには職場要因が含まれており,職場要因は生産性指標に直接的・間接的関連の両方を有していることが示されている.結論:健康と生産性を合わせてマネジメントするためには,職場要因への介入が必須であり,健康経営推進のためには働き方改革と一体として取り組むべきである.働き方改革といっても,各企業・組織の特性によって取り組むべき内容は異なる.各企業・組織において健康課題を可視化し,職場環境や仕事特性との関連性をデータを活用し検証することで,有力なエビデンスを持ってPDCAサイクルを回していくことが期待される.
著者
山崎 喜比古 井上 洋士 伊藤 美樹子 石川 ひろの 戸ヶ里 泰典 坂野 純子 津野 陽子 中山 和弘 若林 チヒロ 清水 由香 渡辺 敏恵 清水 準一 的場 智子
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

健康生成論と人生究極の健康要因=Sense of Coherence(SOC、首尾一貫感覚)並びにエンパワメントアプローチを取り入れた、支援科学でもある新しい健康社会学の理論と方法を、「健康職場」づくりの研究、病と生きる人々の成長と人生再構築に関する研究、SOCの向上や高いことと密接な正の関連性を有する生活・人生経験の探索的研究、当事者参加型リサーチを用いた調査研究の展開・蓄積を通して、創出し描出した。