著者
尾里 建二郎 木村 稔
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

脊椎動物における背腹構造の形成機構は発生学上の焦点の一つである。メダカDa(double analfin)変異体は、胴部、尾部において背側が腹側化している表現型を示す突然変異体である。本研究ではDa変異体原因遺伝子のポジショナルクローニング単離を行った。1)メダカ遺伝的連鎖地図の作成とDa遺伝子のマッピング:メダカ遺伝的連鎖地図を作成したところDa遺伝子は連鎖群VIIIにマップされた。Da遺伝子を挟む形で両側に存在するもっとも近いマーカーとDa遺伝子との物理的距離は144kb、及び360kbであった。これは染色体歩行を開始するにあたり十分近い距離であると考えられた。2)整列化コスミドライブラリーの作成:Da遺伝子近傍のマーカーから染色体歩行を開始し、物理的地図を作成するために、HNI系統を利用してメダカコスミドライブラリーを作成した。平均インサート長40.2kbのものが約12万クローン(メダカハプロイド6ゲノム分に相当)384穴マイクロタイタープレート上に整列化した。これらをスクリーニングしてDa遺伝子近傍の2個のマーカーを含むコスミドクローンを得ることに成功した。3)Da遺伝子近傍の物理的地図の作成:このコスミドクローンをプローブとして、メダカ間期核に対してFISHを行い、これらのマーカーが物理的にも近接して存在していることを顕微鏡下で明らかにした。そこで、これら2個のマーカーから染色体歩行を開始し、BACクローンとコスミドクローンを用いて、Da遺伝子を完全にカバーするコンティングマップを完成させ、Da変異を含む最小領域の決定を行った。その結果、70〜250kbの範囲内にDa変異が含まれていることが明らかになった。これによってDa遺伝子は、1個のBACクローンでカバーされることが期待された。